石原センセイのきっちりおさえるニュースのツボ
5月17日

2018年の労使交渉は一味違う

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
イシハラ

こんにちは。ニッキィさん、最近の関心事は?

ニッキィ

イシハラさん、こんにちは。ホットヨガにハマっています。でも、この頃は混んでいて、会社帰りに寄りたくてもなかなか予約が取れないんです。「働き方改革」ってやつですか? みなさん残業が減ってヨガにも通いやすくなったみたいです。

イシハラ

なるほど。働き方改革はジワリ浸透しているようですね。ゴルフ練習場も、早帰りの設定が多い水曜日や金曜日の夜が混むそうです。2018年の労使交渉の結果を見ていると、この傾向は今後も続きそうですね。

ニッキィ

労使交渉って、「賃金3%増」とかボーナスアップの話し合いじゃないんですか?

イシハラ

はい、基本はそうです。政府が経済界に賃上げを要請する「官製春闘」も今年で5年目になりました。経団連が4月25日にまとめた今春の1次集計では大手企業の賃上げ率は2.54%、日本経済新聞社の賃金動向調査(1次集計、4月3日時点)でも平均賃上げ率は2.41%と、安倍首相が求めた「3%の賃上げ」には届いていませんが、賃上げ率・額ともに高水準です。そのような中、今年は少し傾向が変わってきたようです。

ニッキィ

へえ、そうなんですか。

◎「春闘」とは? 「定昇」とは? 「ベア」とは?

イシハラ

社会情勢の変化に伴い、「春闘」と呼ばれた時代とは交渉のポイントも変化しています。

ニッキィ

春闘って何ですか?

イシハラ

若い方にはなじみがなくなってきましたか! 正式には「春季生活闘争」などと言われます。毎年春に労働組合が経営に対して、賃金引上げや労働時間の短縮などの労働条件の改善を要求する交渉です。労働条件が良くなかった1950年代半ばに始まったとされています。近年は労使間の「闘争」という色合いが薄れ、日本経済新聞では「春季労使交渉」という表現になっています。

ニッキィ

ああ、そういえばテレビで見たことがあります。鉢巻をした人たちが腕組んで「給料上げろ!」とやっている、あれですよね?

イシハラ

では、良い機会なので労使交渉のしくみをお話しましょう。

日本の多くの企業には、労働者の組織である労働組合があります。労働組合は、賃金や労働時間など、自分たちが働きやすい環境のために必要な条件を経営側と話し合います。

ニッキィ

「組合」ってやつですね。うちの会社にもあります。「定昇」とか「ベア」と言ってますね。どちらもお給料に関係するみたいですけど、どう違うんですか?

イシハラ

良い質問ですね。賃金交渉の重要なキーワードです。「定昇」は「定期昇給」の略です。ニッキィさんの会社は、年次が上がると基本給が上がるような給与体系ですか?

ニッキィ

はい、そうです。

イシハラ

とすると、年齢や勤務年数が増えるごとに原則として自動的に給料が増える「階段」が定められているはずです。

ニッキィ

たぶんそうです。年齢で決まっていたと思います。

イシハラ

一方、「ベア」は「ベースアップ」の略で、ベースつまり階段全体が持ち上がることです。どの年次も一斉に上がります。例えばベア2%とすると、今年28歳のニッキィさんの給料の水準が去年の28歳の水準より2%高いという意味です。28歳だけでなくどの年齢も引き上がります。

ニッキィ

後輩のほうが、私が同じ年齢だった時より多いってことですね!

イシハラ

まあまあ・・・・・・。同様に、ニッキィさんだって先輩の年齢になった時には先輩より多いんですから(笑)。

ニッキィ

「定昇」と「ベア」の違いは分かりました。

◎「定昇」と「ベア」では企業の負担が違う

イシハラ

「定昇」と「ベア」は、一人ひとりの従業員にはどちらも給料アップの話でしかないかもしれません。でも企業にとっては大きな違いがあります。

「定昇」は、各従業員が給与体系の階段をそれぞれ昇ります。新入社員が1段目に入ってきて、定年退職者は昇り切って階段から抜けていきます。従業員数や年齢構成が変わらなければ企業の人件費は変わりません。

ニッキィ

ふむふむ。そうですね。

イシハラ

「ベア」は給与体系の階段自体が引き上がります。どの段も賃金が上がり、人件費総額が増えます。企業は一度賃金を上げると下げるのは難しいのでべアには慎重になります。

ニッキィ

確かに。業績が悪くなったから給料下げます、と言われたらガッカリですもんね。

イシハラ

はい、そこで調整弁となっていたのがボーナスです。ボーナスなら、業績に応じた増減も従業員からの理解を得やすいですからね。でも、ボーナスでの調整に頼り過ぎるのも問題です。

ニッキィ

そりゃあそうですよ。ボーナスだと、いくらもらえるか分かりませんからね。

イシハラ

そこです。だから労働組合は、生活安定のために月例賃金を上げる交渉を重視します。でも経営側にとっては、景気や業績が変動するのに合わせて、人件費もある程度柔軟に負担したいのが本音です。そこで派遣社員やパートタイマー、期間従業員などの非正規社員の採用を増やすようになったのです。

ニッキィ

リーマン・ショックの後に「派遣切り」が多く聞かれましたね。

イシハラ

はい、社会問題になりました。近年では、非正規社員の労働条件を改善することも労使交渉のテーマに挙がるようになりました。従来、組合は正社員が加入する組織とされ、組合の活動は組合員の労働条件改善のために行われていました。ところが、働き方が多様化した今、非正規社員まで含めた企業全体の労働条件を改善することの重要性に目が向いてきたといえます。

ニッキィ

時代の流れに伴って、交渉の内容が変わってきたのですね。

◎2018年春の労使交渉は、「働き方改革」が影響

イシハラ

従来の労使交渉は、賃上げをテーマに労使が激しく攻防を繰り広げていました。今は、賃金だけでなく、労働条件としての「働きやすい環境」への関心が高まっています。

ニッキィ

働きやすい環境というと、仕事と育児、介護との両立や、時短勤務、テレワークなどですか?

イシハラ

はい。ワークライフバランス(仕事と生活の調和)の充実は、従業員のみならず、経営側も推進したいテーマです。人手不足への対応はもちろんのこと、生産性の向上につながる施策でもあり、協議は前向きに進みやすい傾向があるようです。

具体的には、今春の労使交渉で、終業から始業まで一定時間を空ける勤務間インターバル制度や、1時間単位で有給休暇を取れる仕組みなどを議論し、導入を合意する動きが広がってきました。

ニッキィ

ただ、働きやすさが進み、生産性が向上して労働時間が短くなると、働く側にとっては収入が減ることになりませんか?

イシハラ

確かに残業時間短縮などによる収入減が将来不安や消費低迷につながるという懸念もあります。そのため、残業時間に関わらず一定時間分の残業代を支給する企業が出てきました。また残業ゼロを達成した社員に手当てを支給したり、生産性向上に貢献した社員にボーナスを上乗せしたりして、残業を減らせば得をする仕組みを導入する動きも始まっています。

ニッキィ

なるほど。労使交渉でお互いがウィンウィンを目指すということですね。労働者側は働きやすく生活不安のない条件を求め、経営側は生産性と収益向上のために「人財」である従業員の働く環境の整備に力を尽くす、ということかな。

イシハラ

人手不足が続く今が、労働条件改善のチャンスかもしれません。春の労使交渉が、双方の最善策を探る機会になりつつあるのは大歓迎ですね。

ニッキィ

イシハラさん、とても興味深いお話でした。ありがとうございました。

今月の金言 難易度2 ★★☆☆☆

春の闘い? 労働条件の改善を求めた労働者側・経営側の交渉の場

ベアより定昇、それよりボーナスという企業のコスト意識が、非正規労働者増加をもたらした

働き方改革の下、ワークライフバランスを整える労使交渉へ

ファイナンシャル・プランニング・コーチ
石原敬子さん

大学卒業後、証券会社に入社。営業12年余の経験から、資産運用アドバイスを専門とするCFP&コーチ。コーチングを取り入れお金と行動の両面からコンサルティングを行う。