石原センセイのきっちりおさえるニュースのツボ
6月20日

「人並み」の貯金って、いくらぐらい?

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イシハラ

ニッキィさん、こんにちは。お仕事と家事や育児に頑張っているそうですね。

ニッキィ

こんにちは。はい。もう、毎日が慌ただしくて。子どもを預けて働いているのですが、なかなか貯金できないのが悩みです。みなさん、どのぐらい貯金を持っているのかしら。

イシハラ

みなさん、「人並みの貯蓄って、いくらぐらいなのだろう」って気になるようです。ちょうど政府の統計が公表されたばかりなので、参考にして話を進めましょう。

貯蓄平均は1,752万円。平均より少ない世帯は3分の2

イシハラ

国は、国民生活の実態を見るため、家計状況を調査しています。2018年の「家計調査報告」では、2人以上の世帯における1世帯当たりの貯蓄額は、2018年平均で1,752万円でした。

ニッキィ

1,752万円? みんな結構持っているんですね。

イシハラ

でも貯蓄がある世帯の約3分の2の貯蓄額は、平均額より少ないんですよ。

ニッキィ

エッ? そんなことあるのですか? 平均より少ない家が3分の2?

イシハラ

統計の世界ではよくある話です。2人以上の世帯で貯蓄がある世帯を、貯蓄の金額順に並べたとします。ちょうど真ん中に位置する世帯の金額は、1,036万円。これを「中央値」といいます。

ニッキィ

平均が1,752万円ですよね? 真ん中の人が1,036万円ですか? 差がありますね。

イシハラ

平均値の計算では、このような結果になることがあります。5人の高校生がテストを受けて、1人が100点。残り4人が40点、30点、20点、10点だとします。平均点は何点ですか?

ニッキィ

5人の合計が200点だから、平均は40点ですね。

イシハラ

では、5人のうち成績が真ん中の人の点数は?

ニッキィ

真ん中の人は30点です。あれ? 本当だ。平均は40点、真ん中の人は30点。

イシハラ

データの中に極端な値がある場合、平均がその値に引っ張られることがあります。この高校生の場合、優秀な1人が平均点を釣り上げています。平均点と同じ人が1人、3人が平均点以下です。

ニッキィ

データを読み取るのは、簡単ではないようですね。

イシハラ

貯蓄額の平均と同様、年収の平均も気になる人は多いようです。これも一部の高収入の人がいることによって、年収平均が実態より高い調査結果になることはよくあります。

ニッキィ

平均だけでなく、「中央値」という真ん中の人の数値も見る必要がありそうですね。

イシハラ

はい。その方がより「人並み」に近い感覚でしょう。

勤労世帯の貯蓄平均は1,320万円。貯蓄ゼロを含めた中央値は、741万円

ニッキィ

それにしても「真ん中の家で貯蓄額が1,036万円」も驚きです。もっとがんばって貯金しなければいけないのかしら?

イシハラ

そんなに焦ることはありませんよ。これは全世代を対象にした、2人以上の世帯の中央値ですからね。会社に勤めている、現役世代の貯蓄がどれぐらいかを見てみましょう。

ニッキィ

あ、そうですね。お年寄りはたくさん貯金している、なんていう話も聞きますからね。

イシハラ

2人以上の世帯のうち勤労者世帯の平均貯蓄額は1,320万円、貯蓄がある世帯の中央値は798万円です。参考値として、貯蓄がゼロという世帯も含めた中央値は、741万円です。

ニッキィ

勤労者というと、経営者や自営業者でなく、お勤めをしている人ですね。自分に近い人たちのデータの方がリアルに感じます。700万円台ならホッとしました。

若い世代は貯蓄よりローンが多く、50歳代から純貯蓄がプラスに

イシハラ

ローンを組んでいるかどうかも、貯蓄額への影響が大きいですよ。この調査では、負債額についても集計しています。2人以上の世帯のうち勤労者世帯で、負債がある世帯の割合は54.6%。負債残高のうちの9割以上は住宅ローンなど住宅・土地のための負債です。

ニッキィ

うちも住宅ローンを組んでいます。ローンを返しながら貯蓄をするのはけっこう大変です。

イシハラ

そうですよね。お子さんにもお金がかかる時期でしょうからね。世帯主の年代別に貯蓄と負債の両方の残高を見ると、50歳ぐらいから楽になっていく様子がうかがえます。

ニッキィ

そうですか? しばらくは頑張らないと。

イシハラ

貯蓄から負債を引いた「純貯蓄額」は、2人以上の世帯で世帯主が40歳未満、40歳代の世帯はマイナスですが、50歳代からはプラスです。具体的には40歳未満の純貯蓄額はマイナス648万円、40歳代はマイナス93万円、50歳代でプラスに転じて1,095万円、60歳代と70歳代で約2,100万円です。

ニッキィ

老後に取り崩す生活費は、リタイアから一生分で2,000万円ぐらいだと聞いたことがあります。60歳代、70歳代の純貯蓄額は、そのぐらいがギリギリ残っているという感じでしょうか。

イシハラ

先日、金融庁の金融審議会のワーキング・グループがまとめた「高齢社会における資産形成・管理」という報告書にもそのような記載がありました。「不安をあおった」と騒動になりましたね。

ニッキィ

急に「老後の生活には2,000万円必要」なんて言われても困ります。テレビ番組の街頭インタビューでも「恐ろしい金額」「先のことは考えない」と答えていた人が多かったです。

イシハラ

この数字は65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯で計算したものです。1カ月に平均約5.5万円の貯蓄の取り崩しをしているので、20年分の生活費が約1,300万円、30年分で約2,000万円が必要、という単純計算に基づいています。所得や貯蓄は個人間の差が大きいので、自分の場合はどうなるか、ちゃんと計算した方がいいですよ。

ニッキィ

でも、将来どうなるか分からないことが多すぎて計算のしようがありません。

イシハラ

貯蓄の平均や、収入・支出の平均を知りたがる方は多いです。けれど、自分の将来の貯蓄額の推移を試算しようとか、収入・支出がどうなっていくかを予測しようと考える人は少ないようです。

ニッキィ

私もそうですが、「普通はどれぐらい?」と思ったり「平均的なら安心」と考えたりするだけで、具体的にどうしようというところまで行動に移せないんですよね。

「我が家の場合」の必要な資金を計算する

イシハラ

ではよい機会なので、将来必要な資金をどのように見積もったら良いかお話しましょう。

ニッキィ

お願いします。

イシハラ

まず、今年をスタートにして、目盛りが1年単位の将来の年表を作ります。夫婦が何歳まで生きるか考えて、余裕を見てその先の数年ぐらいまでの期間が良いですね。

ニッキィ

1枚の表ですか? とても長い表になりそうです。

イシハラ

エクセルなど表計算ソフトが使えれば利用して下さい。難しければ手書きでもOKです。年表には、これからお金の動きそうな出来事を書いていきます。例えば、転職、お子さんの入学、車や大型家電の買い換え、リフォームなどです。それにかかる予算も書き添えておきましょう。

ニッキィ

決まっていないことでも良いですか?

イシハラ

資金を使うかもしれない、と思えばどんどん書きましょう。「いつ頃」「いくらぐらい」など、だいたいで結構です。さらに、生活にかかるお金は「基本生活費」の欄を作り、毎年記入していきます。お子さんの成長でかかるお金が大きくなったり、周期的に買い換えるものがあったりして、将来必要な資金を正確に見積もるのは難しいものです。でも、何もしないより、大ざっぱにでも金額を定めて記入することが大事です。

ニッキィ

現実を見るのが怖いですね。

イシハラ

これで将来の年間支出を「見える化」した年表ができました。支出のめどがだいたい分かります。同じように将来の毎年の収入の欄を設けて各年に記入すれば、収入の将来像も見えます。さらに収入から支出を引いた差額を記入する欄を作ると、毎年の貯金できる金額も「見える化」されます。

ニッキィ

将来の収入なんて、予想がつかないです。

イシハラ

今、可能性があると思える金額でOK。状況が変わったら、その部分を修正した新たな年表を作れば良いのです。ここまでやれば、毎年貯金できそうな金額も計算できます。貯蓄額を毎年累計して行けば、何歳頃に、いくらの貯金ができているかの予測ができますよ。

ニッキィ

寿命までに貯金を使い果たしてしまうかどうかも分かっちゃいますね。

イシハラ

そういうことです。繰り返しますが、予測できるおおまかな値で十分ですよ。精査しようとして自らハードルを上げないこと。まずはだいたいの数字で把握することが大事です。

ニッキィ

ゆる~い感じで取り組むぐらいでちょうどいいのかしら。

イシハラ

そうです。夫婦で、家族でこれからどんな暮らしをしたいのか、どんな楽しみ方をしたいのかを話しながら取り組んでみて下さい。漠然と、老後に2,000万円の生活費で暮らせるかを案ずるのではなく、どんな暮らしで何にお金を使うのかを考えれば、いくら貯金すれば良いかがはっきりしますよ。

今月の金言 難易度2 ★★☆☆☆

「人並み」を知りたいなら、「平均値」だけでなく「中央値」も参考に

世代や働き方、ローンの有無などにより「人並み」は違う

将来起こりそうな出来事を年表にし、お金の流れを「見える化」しよう

ファイナンシャル・プランニング・コーチ
石原敬子さん

大学卒業後、証券会社に入社。営業12年余の経験から、資産運用アドバイスを専門とするCFP&コーチ。コーチングを取り入れお金と行動の両面からコンサルティングを行う。