石原センセイのきっちりおさえるニュースのツボ
8月29日

親が認知症になったら、お金の管理はどうする?

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イシハラ

こんにちは。夏も後半に入りましたね。お休みはどこかに行かれましたか?

ニッキィ

イシハラさん、こんにちは。休みは帰省していました。親戚が集まった時、認知症になった家族の預金口座からお金が引き出せず大変だとこぼしていた人がいました。

イシハラ

そういう話はここ数年あちこちで耳にしますね。

ニッキィ

私の両親は今のところ心身ともに元気ですが、親戚の話を聞いているとだんだん不安になってきます。事前に準備できる対策はありませんか?

誰かに何かをお願いするには「意思」が必要

イシハラ

親や親族が認知症などで判断力が無くなってしまった時のために今できることですね。では、まず「財産管理」の基本から考えていきましょう。財産管理というと、お金持ちだけのことと思われがちです。でも、支払いや契約といった誰もが日常的に行っていることも、財産管理です。

ニッキィ

住宅ローンを組んだり、生命保険に入ったり、投資などの運用をしたり、ですか?

イシハラ

はい。それだけでなく、預金口座から現金を下ろす、買い物をする、借りている駐車場の料金の支払いや更新手続きをする、スポーツジムの会員をやめる、など挙げたらきりがありません。

ニッキィ

なるほど。日常の多くのことまで含まれるのですね。

イシハラ

これらの行為を、誰かに代わってやってもらうことを「委任」といいます。ただし「委任」はお願いする側に意思能力があって、自分でできないから誰かに「委任」するのです。

ニッキィ

足が不自由だから「買い物に行ってきて」とメモとお金を渡す感じですね。

イシハラ

はい。この先の話は、認知症などによって自分の意思を伝えることができない、判断できない、またはそれらの力が衰えてきた人のための手段です。意思能力や判断力が衰えてしまうと、預金の引き出しやローン契約、自宅の売却などを行えなくなります。

ニッキィ

そういう時のための「後見制度」という言葉を聞いたことがあります。

認知症になってからは「法定後見制度」

イシハラ

はい。「成年後見制度」は、終活ブームの後押しもあって最近注目されています。認知症などによって自分で財産管理ができなくなった人が、第三者である「成年後見人」に財産管理をしてもらう制度です。既に認知症などになった人をサポートし、本人に代わって手続きをする人を家庭裁判所が選ぶ「法定後見制度」と、判断力が衰える前に後見人になる予定の人と本人がサポートの契約を結んでおく「任意後見制度」の2つがあります。

ニッキィ

手続きはどのようにするのですか?

イシハラ

法定後見制度を利用する場合は、親族などが家庭裁判所に申し立てをし、後見人を選ぶ手続きをします。サポートを受ける本人の間に利害関係がないなど、家庭裁判所が適任と判断すれば親族や知人でも後見人になれます。ただ実際には司法書士や弁護士、社会福祉士などが後見人になるケースが多いようです。後見人は預貯金の引き出し、施設入所などのための介護保険手続き、病院への入院手続き、不動産や金融資産の売却、相続手続きなどを本人に代わって担います。

ニッキィ

なるほど。認知症になって財産管理に困っているうちの親戚には、法定後見制度を紹介すればよいですね。では、任意後見制度は?

認知症になる前に備える「任意後見制度」

イシハラ

こちらは本人が元気なうちに、後見人になってほしい人と「任意後見契約」を結んでおきます。判断力があるうちは本人が財産管理を行い、判断力が衰えたら後見人が職務を開始するという制度です。自分が選ぶので信頼できる人にお願いできます。

ニッキィ

自分で後見人を選べるなら安心ですね。

イシハラ

実際に利用する場合は、詳しく調べたり専門家に相談したりして、適切に準備してくださいね。注意したいのは、後見制度はあくまでも「財産管理の代理」ということ。食事や排せつなどのサポートや、身元保証人になったり医療行為の同意をしたりするのとは別です。

ニッキィ

分かりました。

後見制度より自由度が高い「家族信託」

イシハラ

ただね、ニッキィさん。後見制度にも不十分な点があって、必ずしも使い勝手が良いといえない部分もあるんです。例えば、不動産を売却して現金化することは可能でも、不動産を買い換えることはできないんです。預貯金で株式投資をするのも不可。後見人のできる財産管理は最低限の範囲であり、投資のような積極的な資産管理はできません。

ニッキィ

別に認知症になってから不動産投資や株式投資をしなくてもいいでしょう。

イシハラ

必ずしもそうは言いきれないのです。相続対策などで、より有利な保有の仕方に換える必要がある人もいますし、建物の大規模修繕やリフォームなども、後見人制度では認められない場合があります。このようなケースでは、縛りが緩やかな「家族信託」が適しているといえます。

ニッキィ

家族信託? 何ですかそれは?

イシハラ

家族信託も財産管理の一つの方法です。2007年の改正信託法の施行により活用できるようになった制度で 、このところ徐々に広まっています。

ニッキィ

信託というと、お金持ちの人が利用するものというイメージですが。

イシハラ

冒頭の「委任」と同様、「信託」も身近な行為です。「信託」は、本人(委託者)が、信頼できる人(受託者)に財産を託して、財産から生じる利益を受ける人(受益者)のために管理してもらうことです。

ニッキィ

それを家族間で託すから、家族信託というのですね。

イシハラ

そうです。例えば「父が息子に、父の財産管理を任せる」という形です。

ニッキィ

それは認知症になってからでもできるのですか?

イシハラ

いいえ。たとえ家族間でも、信託する契約ですから元気なうちに備えるものです。

ニッキィ

それなら任意後見制度と同じじゃないですか?

イシハラ

そうですね。元気なうちに準備し、元気なうちは本人が財産管理をして、判断力がなくなった時点で受託者が手続きをする点は同じです。違う点は、後見制度では、本人や家族が望むことでも、客観的に本人の直接的な利益にならないことは行えません。例えば、十分な年金収入や預貯金がある人が不動産を持っていて、その不動産を売りたい場合、年金や預貯金で生活や介護費用などが賄えると見なされれば、その不動産を売ることは制限されます。後見制度は法の下、裁判所の監督を受け厳格に運用されるのです。これに対して家族信託は本人が判断能力をなくした後も、本人の意向に沿った財産管理を行えます。積極的な資産運用なども、受託者である家族の責任と判断で可能です。

ニッキィ

家族信託は後見制度より自由度が高い感じですね。手続きはどうしたら良いのですか?

イシハラ

信託内容の検討、契約書の作成など、自分で手続きすることも可能ですが、一般の人にとってはハードルが高いと思います。司法書士、税理士、行政書士など、家族信託の設計コンサルティングを業務として担える専門家に相談してみることをおすすめします。

ニッキィ

金融機関も取り扱っているのですか?

イシハラ

情報提供やコンサルティングなど「家族信託支援サービス 」を提供しているところがあります。信託の内容や意向を聞き取ってスキームの大枠を固め、具体的な手続きは専門家である司法書士などに引き継ぐしくみが多いようです。

ニッキィ

今回は、家族が認知症になる前に、お金の管理について備える方法があることが分かりました。家族で相談して詳しく調べたら良いですね。ありがとうございました。

今月の金言 難易度3 ★★★☆☆

認知症などで判断力が衰えると、お金の出し入れから資産の売却などまでが困難になる

判断力が衰えた後は、親族などが家庭裁判所に申し立てる「法定後見制度」が適している

元気なうちは「任意後見制度」か「家族信託」で財産管理不能の事態に備える

ファイナンシャル・プランニング・コーチ
石原敬子さん

大学卒業後、証券会社に入社。営業12年余の経験から、資産運用アドバイスを専門とするCFP&コーチ。コーチングを取り入れお金と行動の両面からコンサルティングを行う。