ニッキィ女性のからだ相談室
5月17日

産後の不安 抜け毛/うつ

「産後に髪が大量に抜けてびっくり…。これって普通でしょうか? どういう症状が出たらお医者さんに相談するべきですか?」
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質問 「産後に髪が大量に抜けてびっくり…。これって普通でしょうか? どういう症状が出たらお医者さんに相談するべきですか?」

 出産は女性の体に様々な変化をもたらします。大仕事を終えた産後は"大きなケガからの復帰期間"と思って、まずは十分な休養と栄養をとって過ごしてください。

 さて質問の"髪の毛"ですが、出産後は髪が細くなったり、ツヤがなくなったり、ごっそり抜けたりすることがあります。肌の乾燥やくすみを感じる人も多いです。これらの症状は生理が戻ってくる頃から改善していくので、あまり心配しなくて大丈夫です。
 なぜこうした症状が起こるのかを理解しておけば、安心して産後の体の回復を見守ることができます。詳しくみていきましょう。

 抜け毛などの変化は、女性ホルモンのひとつ"エストロゲン"の分泌低下が影響しています。普段は卵巣から分泌されているエストロゲンですが、妊娠16週以降になると胎盤から分泌されるようになり、体内のエストロゲンの量は妊娠していない時に比べてなんと最大300倍にもなります。
 そして、出産を迎えるとその後胎盤も体外へ排出され、それまで体内に大量にあったエストロゲンが一気に激減してしまいます。エストロゲン量の低下によって髪や肌が変化し、骨密度も徐々に低下します。
 体内のエストロゲン分泌が戻るとともに症状は改善されていきます。エストロゲンが十分に分泌された結果として起こるのが生理で、「生理が戻る頃には改善する」と言われるのはこのためです。
 産後2〜3カ月で生理が戻る人もいれば2〜3年後の人もいます。授乳中はエストロゲンの分泌が抑制されるため、授乳の状況によってかなり変わります。これについては、次回改めて詳しくお話したいと思います。

 さて、もうひとつの質問の「どういう症状が出たら医者に行くべきか?」については、授乳中に痛みを伴う時は"乳腺炎"という感染症を起こしている可能性があるので、産婦人科へ相談してください。そのほか「おっぱいが出づらい」「腰痛がつらい」などでも、気軽に産婦人科や地域の相談窓口などへ行きましょう。
 産後は赤ちゃんのために小児科に行く人は増えますが、自分のために産婦人科に行く人は少ないです。また、授乳中でも乳がん検査は受けられますし、定期検診の機会には欠かさず足を運んでください。

 "産後うつ"という言葉を聞いたことがあると思います。体の回復も大切ですが、実はもっとも用心したいのはこの"産後うつ"です。

 入院中は周囲に看護婦さんやお母さん仲間もいますが、退院すると家族だけの時間が始まります。出産後6カ月はお母さんにとって、とくに辛い時期です。産後2カ月くらいは授乳のために3時間ごとに起こされ慢性的な睡眠不足になります。さらにエストロゲン不足で自律神経も乱れやすく、慣れない育児でイライラも募ります。産後の女性は"うつ"に陥りやすい環境にあるのです。

 フランスでは出産すると「エクササイズ10回券」といったものが無料で配布され、これが体のサポートだけでなく孤立を防ぐ役割も果たします。エクササイズに参加する=社会と接点をもっていることになり、産後のトラブルに対して第三者のフォローが入りやすいというわけです。日本では1カ月検診を受診しなかった母親へのフォローがようやく始まったところ。"産後うつ"対策はまだ整っていません。

 産後という"大きなケガからの復帰期間"は、自分がやらなくてもいいことを探してパートナーや親、第三者、社会のサポートに遠慮なく頼ること。また、お金で解決できることは解決してしまうことも必要です。そして、家族以外とのコミュニケーションの時間を積極的にもちましょう。不安があったら気軽に相談へ。1人で抱え込まないでくださいね。

結論 髪や肌の変化は、産後によくある症状です。 授乳時の痛みが続いたら“乳腺炎”の可能性があるので産婦人科へ。 産後は遠慮なく人に頼ること、家にこもらず社会と接点をもつことが大切です。
医学博士・産婦人科専門医
スポーツドクター
高尾美穂さん

医学博士、産婦人科専門医、スポーツドクター、ヨガ指導者。婦人科医療、スポーツ、ヨガの3つの柱を軸にイーク表参道で女性それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った選択肢を提示し、女性の人生そのものをサポートしている。