ニッキィ女性のからだ相談室
7月12日

女性のQOL 長寿の役割

「年齢に伴う体力や新陳代謝の衰えが気になります」 「50代になり子育てがようやくひと段落……と思ったら、父が他界。人生を考えてしまいます」
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質問 「年齢に伴う体力や新陳代謝の衰えが気になります」 「50代になり子育てがようやくひと段落……と思ったら、父が他界。人生を考えてしまいます」

 厚生労働省によると、2016年の日本人女性の平均寿命は87.14歳と、男性の80.98歳を大きく上回り、過去最高を更新しました。そんな長い人生を自分らしく生きぬくために、女性の一生とQOL(quality of life=生活の質)について、一緒に考えてみましょう。

 そもそも男女の平均寿命に常に差があるのは、なぜでしょうか? 厚労省のデータでは70年前の1948年の平均寿命も男性55.6歳、女性59.4歳と女性の方が長生きで、現在に至るまで女性長寿が逆転したことはありません。
 少し専門的な話になりますが、これは生物として男女の遺伝子に違いがあると考えられます。人間のすべての細胞の核の中には、23対・計46本の染色体が入っています。対で存在することで安定が保たれている染色体の中で、性別を決める「性染色体」だけが、XXの場合とXYの場合があります。この組み合わせがXXであれば女性、XYであれば男性です。
 XYという組み合わせは遺伝子的に不安定であり、片方に傷がつくと対をなすもう片方で補うことができないため、不具合を修復できず病気を発症しやすくなります。同じ年齢でも男性の方が病気になりやすく、先に寿命を迎えることが多いことの背景には、こうした生物的な違いもあるのです。

 こうした生物学的な体の特徴やメカニズムを理解しておくことは、長い人生のQOLを考える助けになります。

 女性の生物的な仕組みとして知っておくべきは、やはり「生理」です。生理は、13歳頃から50歳頃までの約37年間に起こる生殖機能に伴う現象です。平均的な閉経年齢は49.7歳ですが、50代半ばまで生理が続く人もいます。前述のように女性の平均寿命が約60歳だった時代、閉経後の人生はわずか数年でした。
 しかし今は生理が終わってからも40年近く人生が続きます。この時代をどう生きるかが女性のQOLには重要です。生殖機能がなくなってなお、これほど生き続ける存在は人間の女性しかいません。

 自然界にいる生殖能力を持たずに生きる存在はごくわずかですが、その一例として「働き蜂」が挙げられます。働き蜂たちが何をして生きているかというと、そのメインは女王蜂のサポートです。生殖機能を持つ女王蜂が生きるための環境づくりをしています。ここにヒントがあると思いませんか? 

 閉経後の女性たちの役割のひとつはより良い「環境づくり」かもしれません。環境づくりといっても自然環境の保護という意味ではなく(もちろんそれも大切ですが)、生活や仕事などの環境づくりです。自分だけではどうにもならないことも、環境次第でなめらかに進むことがあります。環境は人が作ります。より良い環境を家族や同僚や仲間たちと一緒に作っていくことは、より良い社会を作ることにつながります。年齢を重ねてその担い手になることが、現代社会で長寿を与えられた女性たちの役割のひとつではないかと思うのです。
 これからの女性のQOLは、自分の生活の質だけでなく周囲の生活の質もあげていくことで満たされていくのではないでしょうか。

 次回は、QOLを実現するために欠かせない健やかな体と心を育む具体的な行動や対策について一緒に考えていきましょう。

結論 一度自分を「ヒトの女性」という生物的な視点で見てみてください。 年齢による変化は生物として避けられませんが、 私たちは生殖機能をもたずに生きる時間が長い希有な存在でもあります。 「人間の女性」として、身の回りの人たちとともにQOLを上げていきましょう。
医学博士・産婦人科専門医
スポーツドクター
高尾美穂さん

医学博士、産婦人科専門医、スポーツドクター、ヨガ指導者。婦人科医療、スポーツ、ヨガの3つの柱を軸にイーク表参道で女性それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った選択肢を提示し、女性の人生そのものをサポートしている。