ニッキィ女性のからだ相談室
8月29日

耳と聴力

「まだ耳が遠くなる年齢ではないのですが、電話が聞こえづらい時があります。耳をよくする方法ってありますか?」
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質問 「まだ耳が遠くなる年齢ではないのですが、電話が聞こえづらい時があります。耳をよくする方法ってありますか?」

 ご相談者のニッキィさんは、通勤中に長時間地下鉄に乗っていたり、イヤホンで音楽を聞いたりしていませんか? 長い時間大きな音にさらされると、耳はダメージを受けます。大音量のライブなどに行かなくても、じつは日常生活のなかに、耳に悪影響を与える大きな音があります。

 耳へのダメージは、音の大きさ×時間によって決まります。世界保健機関(WHO)による2019年の発表では「80デシベル×1週間に40時間、または、98デシベル×1週間に75分を超えると耳の機能を損傷する危険がある」とされています。
 身近な音がどのくらいの音量かというと、アナログの置き時計の秒針は20デシベル、ささやき声は30〜40デシベル。車の騒音は85デシベル、地下鉄が走る音やドライヤーは100デシベル、ロックのライブは115デシベルと言われています。
 1日当たりに換算するならば、地下鉄が走る音に10分以上さらされると、耳がダメージを受ける可能性があるということです。
 
 また、イヤホンで音楽を聞く人は、知らず知らずに「音響性難聴(ヘッドホン難聴)」になっていることも少なくありません。これはヘッドホンやイヤホンそのものが悪いわけではなく、周囲に音がある中でそれに負けない大音量で聞くことに問題があります。
 音楽プレイヤーの最大音量は100デシベルを優に超えます。どうしてもイヤホンを使う場合は、ノイズキャンセリング機能のついたヘッドホンで周囲の音を遮断し、できるだけ音源自体を小さくして聞くように意識することが賢明でしょう。

 ちなみに、健康診断には聴力検査がありますが、何を測っているか知っていますか?
 「ヘッドホン難聴」も、年をとると耳が遠くなる「加齢性難聴」も、4000ヘルツ前後の高音域から聞こえづらくなります。この音域が聞こえなくなっても自分ではなかなか気付けません。そこで聴力検査では、低音の1000ヘルツから高音の4000ヘルツまでの音域の聞こえ具合をチェックしています。それぞれを30デシベルという小さな音で発し、どちらも聞こえていれば「低音も高音もほどほどに聞こえていて日常生活には支障がない」と判断されます。

 なぜ、高音から聞こえづらくなるかというと、耳の構造に理由があります。耳は大きく分けると「外耳(がいじ)」「中耳(ちゅうじ)」「内耳(ないじ)」から成ります。最も奥に位置する内耳には、カタツムリのような形をした「蝸牛(かぎゅう)」があり、その中はリンパ液で満たされています。
 外耳で集音された音は、中耳で増幅され、最終的に振動となって蝸牛まで届き、リンパ液を揺らします。蝸牛にある音を感知するための「有毛(ゆうもう)細胞」がリンパ液の揺らぎをキャッチすると、その刺激が電気信号に変わり脳へ送られます。すると脳では音が「聞こえる」と感じるわけです。
 蝸牛に並ぶ有毛細胞は、入り口から奥へ向かって順に、高音から低音を感知するよう音域分担されています。はじめにダメージを受けるのは入り口付近の有毛細胞であるため、高音から聞こえづらくなるのです。

 この有毛細胞は一度機能が失われると元には戻りません。残念ながら現在、難聴への根本的な治療法はみつかっていません。だからこそ、普段から音に配慮して生活することが欠かせません。

 長い人生を楽しく過ごすために聴力は大切です。聞こえが悪くなると、不便なだけでなく、コミュニケーションが減り、活動性が下がる傾向があります。さらにはそのために、認知症やうつ状態になりやすいこともわかっています。
 長時間、大音量を浴びないこと。もしも大音量にさらされたら、静かな場所で3倍以上の時間、耳を休めるようにしてください。
 なお、私のおすすめは耳栓です。長時間大きな音にさらされる新幹線や飛行機に乗る際には必ず耳栓をします。出張の多いニッキィさんは、ぜひお試しくださいね。

 最後に、原因不明で起こる「突発性難聴」についてお伝えしておきます。片耳だけ急に聞こえなくなったら、迷わず病院へ行ってください。突発性難聴は、数日以内に治療することがカギです。有毛細胞が壊れてしまう前に、できるだけ早く治療することで治る可能性が高まります。

結論 一度失われた聴覚は元に戻りません。治療法もありません。 日頃から大音量に長時間さらされないよう 耳へのダメージを減らす心がけをしましょう。
医学博士・産婦人科専門医
スポーツドクター
高尾美穂さん

医学博士、産婦人科専門医、スポーツドクター、ヨガ指導者。婦人科医療、スポーツ、ヨガの3つの柱を軸にイーク表参道で女性それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った選択肢を提示し、女性の人生そのものをサポートしている。