ニッキィ女性のからだ相談室
12月12日

骨盤

「ジムやマッサージサロンで『骨盤矯正』『骨盤ほぐし』などの言葉をよく見かけ、気になっています。骨盤ってゆがみやすいんですか?」
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質問 「ジムやマッサージサロンで『骨盤矯正』『骨盤ほぐし』などの言葉をよく見かけ、気になっています。骨盤ってゆがみやすいんですか?」

 日本では女性を中心に「骨盤」への関心が常に高いようです。骨盤がカラダの要であることは間違いありません。と同時に要である骨盤は、たやすくゆるんだり、ゆがんだり、開いたりするものではありません。また、骨盤は直接調整できるものではなく、骨盤が整うと生理不順が治ったり、体の調子がよくなったりすることはまずありません。
 誤解が多い骨盤について、正しい知識をつけることから始めましょう。

 骨盤というと、皆さんの頭に浮かぶのは骨格模型のイメージかもしれません。しかし実際の骨盤は周囲にたくさんの靭帯や筋肉があり、がっちりとテーピングされているような状態にあります。
 整体の世界では、骨盤の中心にある仙骨(せんこつ)の一部が「うなずき運動」をすると言われることがありますが、その動きというのも髪の毛1本分程度。レントゲンでもMRIでもはっきりと捉えられないほどわずかです。それほど骨盤はしっかり固定されているものなのです。

 しかし、女性の人生には本当に骨盤がゆるむ時期があります。妊娠中から出産にかけての時期です。妊娠・出産時の骨盤のゆるみと日常的な生理不順などが混同され、骨盤への誤解を生んでいると言えるでしょう。

 骨盤への誤解を解くには、骨盤の役割を理解するのが近道です。
 骨盤の役割の1つ目は、上半身と下半身をつなぐジョイントとしての役割です。仙骨によって背骨とつながり、寛骨(かんこつ)によって大腿骨につながり、上半身と下半身をつないでいます。二足歩行し複雑な動きをする人間のカラダをつなぎ支える骨盤は、簡単にゆがむほどヤワではありません。
 2つ目は、内臓を支える受け皿です。四足歩行の動物は内臓が横並びのため負荷が分散されますが、立位の二足歩行をする人間は内臓が縦に並んでいます。重力にしたがって下に落ちようとする内臓を受け止めるのも骨盤の役目です。
 そして3つ目は、出産の際の骨産道になることです。

 内臓を受け止めるためには、骨盤に穴のような出口がないことが望ましいです。赤ちゃんを通す必要のない男性の骨盤の出口は、そこまで大きい必要はありません。これに対して女性は赤ちゃんを通す可能性があるため、ギリギリ胎児の頭が通れるほどの出口があいています。そして、出産を迎える段階になると、骨盤にある仙腸関節や恥骨結合がゆるみ、出口のサイズを大きくすることで赤ちゃんが出やすい状態を作るのです。

 そのため妊娠・出産を迎えた女性は関節がゆるみやすく、ゆがみが起こりやすくなります。妊婦さんの7割が、骨盤の寛骨の高さが違う、すなわち大腿骨のスタート地点が左右で違う、という調査結果もあります。これは一方では、関節がゆるんでいる産後こそカラダのゆがみを正せるチャンスということでもあります。2018年6月の〈産後の選択 食事/授乳/体型〉の回も参考にしてみてください。

 産道としての骨盤の出口は、人生でごくたまにしか使いませんし、使わない人もいます。とはいえ、大切な出口なので骨で閉じてしまうわけにはいきません。そこで普段は「骨盤底筋」という筋肉で蓋をしてあります。普段は無いほうがいいけれど、出産時は不可欠。この相反することを可能にする、複雑な骨や筋肉の仕組みを備えているのが、女性の骨盤を取り巻く環境です。

 骨盤の役割を知ると、多くの女性が骨盤に関心を寄せ、ケアしたくなる気持ちもわかりますが、骨盤がそれほどヤワなものではないことも理解できるかと思います。正しい知識を持って、自分のカラダと向き合っていきましょう。

結論 骨盤は普段の暮らしで、ゆるんだり、歪んだりすることはまずありません。 また、直接調整したりケアしたりできるものでもありません。
医学博士・産婦人科専門医
スポーツドクター
高尾美穂さん

医学博士、産婦人科専門医、スポーツドクター、ヨガ指導者。婦人科医療、スポーツ、ヨガの3つの柱を軸にイーク表参道で女性それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った選択肢を提示し、女性の人生そのものをサポートしている。