ニッキィ女性のからだ相談室
6月11日

尿もれと骨盤底筋

「急いで小走りした瞬間に尿もれが……。まだ44歳。この先が心配です」
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質問 「急いで小走りした瞬間に尿もれが……。まだ44歳。この先が心配です」

 尿もれは縄跳びやランニングをしたときだけでなく、立ち上がった瞬間やロウソクの火を消そうとしたとき、くしゃみと同時になど日常の動作でも起こります。男性よりも女性に多く、40代以上の女性なら多くの人が体験することです。44歳で尿もれを経験しても不思議ではありません。

 尿もれには「腹圧性(ふくあつせい)尿失禁」と「切迫性(せっぱくせい)尿失禁」の2種類があります。尿意の有無に関わらず、お腹に力が入った腹圧によってぼうこうが刺激され起こるのが腹圧性尿失禁で、尿もれの約65%を占めます。一方、尿意を感じてトイレに行こうとしたのに間に合わず失禁してしまうといった、尿意とぼうこうの収縮のタイミングがマッチしていないのが切迫性尿失禁。寒さや冷たい水など、何らかの刺激でぼうこうが過剰に収縮反応を起こすことが原因で起こります。約15%の尿もれがこのタイプです。どちらも起こる混合性の人もいます。

 尿はぼうこうにたまり、尿道を通って体外へ排出されます。腹圧がかかっても尿がもれない仕組みはストローを指で押さえるのと同じように、骨盤の底にある「骨盤底筋(こつばんていきん)」という筋肉が下から尿道を押しつぶしてくれているからです。骨盤底筋の衰えや緩みが尿もれにつながります。骨盤底筋については2019年12月の〈骨盤〉の回も参考にしてください。

 男性より女性に尿もれが多い理由は体の構造の違いにあります。女性の骨盤底筋には、ぼうこう、子宮、直腸がそれぞれ体外とつながるために、尿道、腟(ちつ)、肛門という3つの出口があります。しかし、骨盤底筋のうち体の最も外側で働く筋肉は2つしかありません。男性は尿道と肛門の2つの出口にひとつずつの筋肉が働きますが、女性はひとつの筋肉で尿道と腟、もうひとつの筋肉で肛門に対応しています。尿道と腟の2つがセットであることが、男性に比べて女性に尿もれが多い理由です。

 女性の骨盤底筋が最も大きく変化するのは出産です。赤ちゃんを外へ送り出すために、子宮口や腟が10センチ大にまで開きます。出産を経た骨盤底筋は伸びたゴムのようになるため、産後の女性には尿もれが起こりやすくなります。骨盤底筋はやがておおよその伸縮性を取り戻しますが、産後1年以上が過ぎても尿もれが起こることがあります。それは将来、尿もれが起きるリスクが高いというサインです。産後1年が過ぎ、時々でも尿もれが起きる人たちは、そうでない人たちに比べて高齢になると尿もれを起こしやすいことがわかっています。出産を経験した方で、尿もれが長く続いた方はぜひ注意しておきましょう。

 尿もれの治療法として、腹圧性尿失禁には手術、切迫性尿失禁には服薬などがありますが、そこに至る前にできることがあります。骨盤底筋を鍛えることです。人間の筋肉には自分の意思で動かせる筋肉、すなわち鍛えられる筋肉と、そうでない筋肉があります。詳しくは2019年1月の〈自律神経〉の回を参考にしてください。骨盤底筋は体の奥にあるため意識しづらいですが、鍛えられる筋肉です。努力次第で将来の尿もれを減らせるのですから、産後1年を過ぎても尿もれがあった人はもちろん、女性はぜひやっておきたいトレーニングです。次回は骨盤底筋のトレーニングについて詳しくご紹介します。 

結論 もともと女性は男性よりも尿もれしやすい体の構造です。 40歳以上の女性にとって尿もれは身近な出来事。 高齢期の尿もれを減らすために骨盤底筋を鍛えましょう。
医学博士・産婦人科専門医
スポーツドクター
高尾美穂さん

医学博士、産婦人科専門医、スポーツドクター、ヨガ指導者。婦人科医療、スポーツ、ヨガの3つの柱を軸にイーク表参道で女性それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った選択肢を提示し、女性の人生そのものをサポートしている。