ニッキィ女性のからだ相談室
11月12日

舌と味覚

「女性は味覚障害になりやすいと聞いたことがあります。家族から『近ごろ、料理の味が濃い』と言われ、不安になりました。病院に行った方がいいでしょうか?」
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質問 「女性は味覚障害になりやすいと聞いたことがあります。家族から『近ごろ、料理の味が濃い』と言われ、不安になりました。病院に行った方がいいでしょうか?」

 何を食べても同じ味に感じたり、味をまったく感じなかったりする場合は味覚障害の可能性があります。味覚障害は半年以上放置すると回復しづらくなるため、明らかな異常を感じたら早めに耳鼻咽喉科へ行くことをおすすめします。
 味覚障害の約半数は亜鉛不足で起こります。新型コロナウイルス感染が心配な今、病院へ行くことを控えたければ、まずは亜鉛を多く含むカキや豚肉などの摂取を心がけたり、サプリメントを利用したりして、少し様子を見てもいいでしょう。
 
 味をキャッチするのは舌や上あごの表面などにある「味蕾(みらい)」という受容体です。1つの細胞にある味蕾の数は年齢とともに減少します。20歳では約250個ありますが、75歳では約80個とおよそ3分の1にまで減ってしまいます。そのため、年を重ねるにつれ味覚が鈍くなり、濃い味付けになる傾向があります。味覚の変化に気づかず塩分の多い食事が続くと、高血圧などを招くことがあります。家族からの指摘を機に、一度自分の味覚を疑ってみてください。

 近年は年齢にかかわらず、若い世代にも味覚障害が増えています。その原因は主に3つあります。
 1つ目は偏食や極端なダイエットです。同じものしか食べない偏食や食事制限などで味蕾を十分に使わない生活が続くと味蕾が減っていきます。
 2つ目は食品添加物です。スナック菓子や加工食品などに含まれる食品添加物は亜鉛の体内への吸収を阻害します。味覚が正常に働くために必要な亜鉛が不足すると味覚障害が起こります。
 3つ目は唾液不足です。味蕾が味を認識するためには唾液が必要で、唾液が少ないと味をキャッチしづらくなります。交感神経の働きが活発な状態、すなわち緊張状態が続くと唾液の分泌が減ります。ストレスの多い現代社会では口の渇きを感じている人が多く、味覚が鈍っている人も少なくありません。
 
 また、女性は妊娠中や授乳中に亜鉛不足になりやすいため、味覚の変化や味覚障害を経験する人が多いです。このほか、唾液や涙などの分泌が低下する「シェーグレン症候群」という自己免疫性疾患は、男性に比べて女性の方がなりやすく、とくに50代に多くみられます。

 最後に五感に関する面白いアンケート結果をご紹介しましょう。「視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚の五感のうち、5億円をもらえたらどの感覚を手放すか」という問いで、回答の上位になったのは味覚と嗅覚だったそうです。見えない・聞こえない・感触がない不便に比べると、味や匂いがわからないことの方がまだ許容できるという人が多いようです。味覚と嗅覚は動きに直結する感覚ではないため、このような結果になったのかもしれません。
 味覚は食べる楽しみにつながる感覚です。豊かな暮らしにおいしい食事は欠かせません。長い人生を楽しむためにも、ふだんから食生活やストレスに気をつけ、味わう感覚を大切に過ごしましょう。

結論 年齢とともに味を感じる「味蕾」が減るため味覚は鈍ります。味がまったくわからないなど明らかな味覚障害を感じたときは、放置せず早め(半年以内)に耳鼻咽喉科を受診しましょう。
医学博士・産婦人科専門医
スポーツドクター
高尾美穂さん

医学博士、産婦人科専門医、スポーツドクター、ヨガ指導者。婦人科医療、スポーツ、ヨガの3つの柱を軸にイーク表参道で女性それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った選択肢を提示し、女性の人生そのものをサポートしている。