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5月10日

武田、シャイアー買収合意 日本勢最高の6.8兆円(5月8日付朝刊1面、9日付朝刊1面ほか)

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 武田薬品工業は今月8日、アイルランドの製薬大手シャイアーに対して買収 を正式に提案。この日に両社経営陣が合意し、武田が完全子会社化することを 発表しました。  今後は、両社の株主の同意を得る手続きがはじまります。買収総額は約46 0億ポンド(約6兆8000億円)で、実現すれば日本企業によるM&A(合 併・買収)としては過去最大。極めて大きな買収計画であり、日経ではこの ニュースを、両社の合意に先立って8日付朝刊1面などで報じました。

 製薬会社が新薬を開発するには、一般に10年以上もの年月がかかります。 画期的な新薬を生み出すのは年々難しくなり、研究開発費用はますます巨額と なっています。無事に有力な新薬が開発・発売できれば大きな収益が得られる ものの、一定期間後には特許が切れてしまうので、1つの新薬から得られる収 益が長期間続くわけではありません。  世界の製薬大手では大型M&Aが相次ぎ、巨大企業が生まれています。日本 の製薬会社が国際競争に勝ち残っていくには、事業規模を拡大するとともに、 有力新薬を生み出すための研究開発力を確保していくことが必要でした。

 今回の武田によるシャイアー買収も収益力と研究開発力を目指したものです。 買収後の売上高は3兆円を超え、世界トップ10に入る巨大製薬会社となりま す。シャイアーは、患者数は少ないものの高価格で販売できる「希少疾患治療 薬」と米国市場での販売力に強みを持ちます。事業規模の拡大に伴って研究開 発費も5000億円規模に増える見通しです。

 M&Aは近年、短期間に効果的に事業を強化するための手段として世界各国 の企業が活用しています。有力企業を買収することで、その企業が持つ優れた 技術や人材、販売網などを一気に手に入れることができるからです。

 とはいえ、必ず競争力が高まるという単純な話ではありません。買収後、両 社の社員がその能力を発揮できるような適切な経営をしていかなければ、むし ろ買収を契機に人材が離れ、競争力が低下してしまう恐れがあります。  また9日付3面の記事で解説しているように、近年は、創薬スタートアップ と呼ばれる新興企業や大学との共同研究によって新薬候補が生まれるケースが 増えています。新薬を生み出すハードルが年々高まり、製薬企業だけが単独で 新薬を開発するのはリスクが高いからです。

 今回の買収計画によって、武田がどれだけ収益力・競争力を高められるかは 未知数です。有望な新薬を生み出せる独自の研究開発体制を構築できるか、両 社の強みの相乗効果を引き出すような経営環境を整備できるか、などが注目点 です。(waka)