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9月27日

基準地価、27年ぶり上昇 訪日客効果広がる(9月19日付朝刊1面、5P経済面ほか)

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 9月19日付の日経朝刊1面で、日本の地価動向について大きく報じていました。 国土交通省がこのほど発表した2018年7月1日時点の基準地価が、前年比で27年 ぶりの上昇に転じたというニュースです。  基準地価は、都道府県がまとめた全国の地価調査の結果に基づいて国土交通 省が毎年9月に公表するもので、民間企業などの土地取引の指標となります。 公的に発表される地価にはこのほか、国交省が3月に公表する公示地価や、国 税庁が夏に公表する路線価があります。

 地価もモノの値段と同じように、需要と供給のバランスで決まります。工場 などを建てようとする企業や住宅を買おうとする個人が増え、土地への需要が 高まれば、地価は上がります。それだけ経済活動が活発で、景気が拡大局面に あると判断できます。逆に景気が低迷し土地への需要が縮小すれば、地価は下 がります。

 現在、地価が上昇している基本的な背景には、企業の業績が好調で、オフィ ス需要が伸びていることがあります。20年の東京五輪開催が決まって以降、大 規模な都市開発が進むと見込んで、国内外の投資資金が日本の不動産市場に流 入したことも地価上昇を促しました。  さらに、訪日外国人客の増加も最近の地価動向に関係しています。北海道や 京都、沖縄など外国人に人気の高い地域はホテルや店舗の需要が高まり、それ が地方の地価を高めているのです。この日の記事にもあるように、北海道ニセ コ地区は、スキーリゾート目当ての訪日客が多数訪れる人気スポットとなって います。海外富裕層の需要を見越して、高級コンドミニアムの建設が相次ぎ、 全国でも有数の地価上昇地区となりました。

 バブル崩壊以降、日本は地価が持続的に低下する「土地デフレ」の状態が続 きました。企業にとっては保有する土地・不動産の資産価格が下がり、財務を 悪化させることになります。つまり地価下落自体が景気にとってマイナス要因 であり、1990年代後半からの不況が長期化した遠因でもありました。  基準地価が上昇に転じたことから、日本がようやく長い土地デフレから脱し たと捉えることができます。土地デフレ解消は企業財務の改善につながります。 不動産を担保にした借り入れがしやすくなるなど、設備投資を活性化させる効 果もあります。景気動向の大きな転機となるかもしれません。

 ただ、地価の上昇傾向が今後も続くかどうかは微妙です。今年は国内で多く の自然災害が発生しました。現在の地価は訪日客に下支えされている面がある ため、もし災害の影響で訪日を敬遠する人が増えれば、地価の伸びも鈍化する かもしれません。少子化により国内人口は着実に減少するため、住宅地の地価 は中長期的には下がっていく可能性が高いと言えます。  景気の動きと関連づけながら、今後の地価動向に引き続き目を向けておきま しょう。(waka)

経済ライター
若槻基文さん

大学卒業後、編集制作会社を経て独立。経済・金融・金銭教育分野を中心に、小学生向けからシニア向けまでさまざまなコンテンツ執筆を手掛けている。オフィステクスト代表取締役。