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10月 4日

カナダも車数量規制 米と新NAFTA合意 3カ国協定維持(10月2日付朝刊1面、3P総合面ほか)

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 トランプ米政権は9月30日(日本時間10月1日)、北米自由貿易協定(NAFTA) の再交渉でカナダと妥結したと発表しました。北米経済だけでなく、自動車業 界をはじめ日本の産業界にも影響を与える大きなニュースです。

 このコラムでも何度か解説していますが、特定の国や地域との貿易を活発に するため、関税をはじめとする貿易障壁を相互に削減・撤廃する協定を自由貿 易協定(FTA)といいます。  NAFTAは米国・カナダ・メキシコの3国が参加するFTAです。北米地域に大規 模な自由貿易圏をつくり出すことを目的に1994年に発効。2008年に関税が撤廃 されました。これにより、米国のメーカーがカナダのメーカーから部品を輸入 したり、メキシコに工場を建設してそこで作った部品を米国に輸入したりする 場合などは関税がかかりません。3カ国間の貿易が活発化し、域内全体の経済 にプラスに働くと期待できます。

 またNAFTA以外の国のメーカーにとっては、メキシコやカナダに工場を建設 してそこから米国に輸出すれば関税がかからないので、米国に直接輸出するよ りも有利です。日本の自動車メーカーなどがメキシコやカナダを重要な輸出拠 点と捉え、積極的に進出してきたのもそのためです。

 なかでも賃金の安いメキシコに米国輸出向けの工場を建設する企業が増えた ことから、米国はメキシコとの貿易赤字が拡大してしまい、問題化しています。 メキシコから割安な製品の輸入が増えるということは、それだけ米国内の雇用 がメキシコの労働者に奪われていると見ることもでき、米国の労働者の間で不 満の声が高まっていました。  トランプ大統領は就任前から、環太平洋経済連携協定(TPP)脱退やパリ協 定離脱と並んで「NAFTAの再交渉」を主張しており、2017年8月から再交渉を続け てきました。米国とメキシコとの交渉が先に合意し、カナダとの交渉が難航し ていたため3国の協調体制が崩れるのではないかとの見方もありましたが、こ のほど妥結に至り、3カ国での協定が継続します。新協定の名称は「米国・メ キシコ・カナダ協定(USMCA)」となる見通しです。「自由貿易(Free Trade)」 の文言を協定名から外すことになりそうです。

 この日の3面の記事にもあるように、今回の交渉の結果、カナダやメキシコ から米国に関税無しで輸出できる乗用車の台数は両国とも「年間260万台まで」 と、数量制限が取り入れられました。  また、3カ国以外の国でつくった部品を多く使った自動車が米国に輸入され るのを防ぐため、規制が強化されました。簡単に言うと、日本メーカーがメキ シコ工場でつくった自動車を米国に輸出する場合も、部品の多くが日本製であ れば、関税が課されることになります。NAFTAを前提とした日本車各社の輸出 戦略は大幅な見直しを迫られそうです。

 トランプ政権は、自由な貿易よりも自国産業の保護を優先する通商政策を推 進しています。それは貿易を抑制することにつながり、結果的に米国経済にも マイナス要因となる可能性があります。今回の協定妥結が実際にどのような影 響を及ぼしていくか、注視していく必要があります。(waka)

経済ライター
若槻基文さん

大学卒業後、編集制作会社を経て独立。経済・金融・金銭教育分野を中心に、小学生向けからシニア向けまでさまざまなコンテンツ執筆を手掛けている。オフィステクスト代表取締役。