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11月15日

中国、産児制限の撤廃検討  社会保障負担増にらみ 少子化歯止めは見通せず(11月10日付朝刊1面、3P総合2面)

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 11月10日付の日経朝刊1面で、中国が産児制限を撤廃する検討を始めたとの ニュースを大きく報じていました。中国の中長期的な人口動態に影響を与える 話題です。

 中国は1978年に改革開放政策を始めて以来、目覚ましい経済成長を遂げまし たが、2011年以降は減速が顕著です。2016年の経済成長率は6.7%と、1990年 以来、26年ぶりの低水準を記録。翌2017年はわずかに前年を上回ったものの6. 9%でした。

 中国経済の減速のきっかけは、2010年春以降に本格化した欧州経済危機でし た。中国にとって欧州は最大の輸出先であり、ギリシャの財政問題をきっかけ に欧州経済が動揺し、輸出が急激に減少したことが、中国経済に大きな打撃と なりました。国内でインフラ(鉄道網や道路などの公共設備)向けの投資や住 宅販売が落ち込んだことも関連産業の業績悪化を招き、景気を圧迫しました。 米国との貿易摩擦の激化も懸念材料です。

 中国経済にとってのもう1つの大きな課題が、労働力人口の減少です。  同国では1980年ごろから「一人っ子政策」と呼ばれる人口抑制策を導入しま した。夫婦1組の子の数を1人に制限するという政策です。当時の中国経済はま だ発展途上の段階にあり、人口の急激な増加により深刻な食料不足が起こると の懸念があったためです。

 この効果は絶大で、記事にもあるように出生数は1990年の2800万人から1999 年の1400万人へと激減しました。1人の女性が生涯に平均で何人の子を産むか を示す合計特殊出生率は、1979年の2.75から、2010年は1.18まで下がっていま す。この結果、日本と同じように労働力不足がすでに深刻化しています。

 そこで中国政府は2016年、30年以上続けてきた「一人っ子政策」を改め、す べての夫婦に2人目の子を認める「二人っ子政策」に移行しました。それでも 少子化の流れに歯止めはかからず、政府は産児制限の撤廃を検討し始めた模様 です。ただ、経済成長に伴って少子化が進むのは世界的に見られる傾向であり、 産児制限の見直しだけでどれだけ出生率を回復できるかは不透明です。

 中国は米国に次ぐ世界第2位の経済大国であり、その成長の原動力となって きたのは世界最多の人口を国内に有することでした。このまま人口減少が続け ば、経済成長に影を落とす可能性があります。同国の成長を前提としてきた日 本企業のアジア展開も見直しを迫られるかもしれません。今回のニュースが注 目されるのもそのためです。(waka)

経済ライター
若槻基文さん

大学卒業後、編集制作会社を経て独立。経済・金融・金銭教育分野を中心に、小学生向けからシニア向けまでさまざまなコンテンツ執筆を手掛けている。オフィステクスト代表取締役。