wakaの日経、ここをこう読む
1月17日

米原油生産45年ぶり首位 エネルギー地政学一変(1月14日付朝刊1面)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 本年もこのメルマガとこのコラムをよろしくお願いいたします。  米国の2018年の原油生産量が45年ぶりに世界最大になったと見られ、この ニュースを1月14日付の日経朝刊1面で大きく報じていました。同国での「シェー ルオイル」の生産拡大が背景にあります。

 以前も紹介しましたが、泥岩の一種である頁岩(けつがん=シェール)層に 含まれる原油を「シェールオイル」、同様に頁岩層に含まれる可燃性のガスを 「シェールガス」と言います。どちらも採掘が難しいため以前は利用が進んで いませんでしたが、高圧の水で頁岩層に亀裂をつくって採掘する技術などが確 立され、2000年代に北米で本格的な商業生産がスタートしました。

 通常の原油や天然ガスに比べると採掘コストがかかるため、当初は予想され ていたほど生産量は増えませんでした。その後、技術革新によるコスト削減が 進んだ結果、採算性が向上し生産量が拡大。記事にもあるように、17年時点で 米国はロシア、サウジアラビアに次ぐ世界第3位の原油生産国でしたが、昨年9 月までに両国を抜いていました。

 米国がシェールオイルを大量に供給するようになると、世界のエネルギー価 格の動向に影響を与える可能性があります。もともと原油を産出する地域は中 東をはじめ一部に限られるため、産油国の生産動向は価格に大きな影響を与え てきました。主要な産油国は石油輸出国機構(OPEC)を構成して原油の生産量 を決め、原油価格をある程度コントロールしてきました。しかし米国の産油量 が増えれば、中東を中心とする産油国の意向だけで価格が動くわけではなくな ります。

 もう1つ、今回の記事で指摘している重要な論点は、「米国の原油生産の拡 大は、同国と中東諸国との外交関係に影響を与える可能性がある」ということ です。米国は原油を中東からの輸入に頼っており、だからこそ「世界の警察官」 として中東諸国の複雑な政治情勢に積極的に関与してきました。それがエネル ギーの安定的な確保につながるからです。  しかし、シェールオイルの生産が拡大しエネルギーが自給できるようになっ たため、中東に関与する意味合いが薄れます。さらに原油を輸出する立場にな れば、外交交渉にとっては有利に働きます。米トランプ政権の外交政策にも変 化が起こるかもしれません。

 世界の原油生産の動向は、企業活動や消費生活を左右するだけでなく、国際 的な政治・経済の構図にも影響を及ぼします。非常に重要な話題ですので、今 後も関連記事に注目してください。(waka)