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3月 7日

iPS再生技術 治療から創薬へ 新興勢など研究キット ALSや認知症 開発効率的に(3月1日付朝刊 17P企業3面)

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 3月1日付の日経朝刊で、iPS細胞を使った再生医療の最新事情を伝えていま した。  iPS細胞とは、体のあらゆる細胞や組織に成長するという性質を持つ「万能 細胞」の一種です。iPS細胞を初めて作製した京都大学の山中伸弥教授は、そ の研究の功績により2012年のノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

 人間の万能細胞を筋肉や神経、心臓などの臓器の細胞に育てて患者に移植す れば、現在の医療技術では治せないような難病でも、治癒への道が開ける可能 性があります。けがや病気で正常な働きが失われた体の組織や臓器の機能を回 復する医療を「再生医療」といいます。iPS細胞は、体のあらゆる部位の細胞 に育てることができるので、皮膚の細胞を基に心臓などの細胞を作ることも可 能です。実用化に向けた研究がかなり進んでおり、日本でも18年には大阪大学 と京都大学が、19年2月には慶応義塾大学が、それぞれiPS細胞を使った難病治 療の臨床試験計画を厚生労働省に了承されています。

 今回の記事で取り上げているのは、再生医療技術を治療だけではなく、医薬 品の開発(創薬)に活用する例が増えていることです。  新薬の開発では、人体でその効果や副作用などを確認するプロセスが必要で す。iPS細胞を使って試験用のヒトの細胞を次々と生み出せれば、それを活用 して試験を繰り返し、効率的に新薬を開発できるかもしれません。

 記事でも紹介しているように、東京大学発のバイオベンチャー、ジクサク・ バイオエンジニアリングは、iPS細胞から運動神経や中枢神経を作る技術を確 立。これを研究用のキットとしてこのほど発売しました。体が徐々に動かなく なる難病・ALS(筋萎縮性側索硬化症)の研究を想定したもので、新薬候補の 効果検証や細胞の解析をしやすくなり、新薬開発の効率化に貢献できるといい ます。このほかにも、マラリアやデング熱ウイルス向けの研究キットを開発し たり、創薬研究向けに3Dプリンターで肝臓のサンプル組織を生み出したりする など、さまざまなベンチャー企業が取り組んでいます。

 再生医療技術の実用化・普及には企業の力が欠かせません。日本の研究チー ムが作製に成功したiPS細胞ですが、創薬などに実用化するための研究開発は 米国や欧州の製薬大手が先行していると言われ、日本勢は出遅れています。  大手製薬企業はもちろん、この分野で独創性を発揮するような意欲的なベン チャー企業が日本でも次々と登場し、再生医療技術の実用化に貢献していくこ とを期待しましょう。(waka)