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9月12日

英離脱強行、狭まる選択肢 再延期法案 下院で可決 解散カード不発 首相、週明けに再提案(9月6日付朝刊 3P総合2面)

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 9月6日付朝刊で、欧州連合(EU)からの離脱をめぐる英国の政治情勢を大き く報じていました。2月のこのコラムで解説した時点で、英国がEUとの合意の ないまま離脱する可能性が高まっていましたが、現在も混迷が続いています。

 EUに加盟する経済的なメリットは、加盟国間での関税が撤廃され、人・モノ・ サービス・資本の移動が自由化されることです。これが域内経済の活性化を促 していますが、その半面、ギリシャの財政問題が欧州全体に危機をもたらした ように、負の要素が域内に波及しやすい面もあります。また中東やアフリカか らEUに流入した移民は、ドイツや英国など経済が比較的堅調な国々に集まりや すく、これもEUへの不満や不信感を高める要因になっています。

 EUから離脱すべきとの声が高まった英国は、2016年に国民投票を実施。離脱 支持が全体の過半数を占めたことから、離脱が決まりました。しかし国民投票 の賛否が52%対48%の僅差だっただけに、いまだに政界内の立場も世論も錯綜し ており、政府は明確な方向性を打ち出せずにいます。EU離脱期日は今年3月で したが、これまで2回延期され、10月末に再度の期限を迎えます。

 もともとEU残留を支持していたメイ前首相は、国民投票後はEUと合意を得た 上での「穏健な離脱」を目指したものの、離脱案を議会で通すことができず今 年7月に辞任に追い込まれました。その後、与党の党首選に勝利したボリス・ ジョンソン元外相が首相に就任します。  ジョンソン首相は、EUとの合意無しでも離脱を断行すべきとする「強行離脱 派」です。この姿勢に反発する議員は野党だけでなく与党内にもおり、EU離脱 を10月からさらに3カ月延期する法案がこのほど英議会下院で可決され、上院 の承認も得て成立しました。ジョンソン首相の強行離脱方針にひとまずストッ プをかけた格好です。

 ここまで事態が混迷しているのは、EUと英国との間で、離脱後のルールづく りが難航していることも背景にあります。大きな課題は英国とアイルランドと の外交問題です。アイルランド島は英国領の北アイルランドとEU加盟国である アイルランドに分かれ、過去には激しい紛争が起こったこともありました。EU 離脱後も、英領北アイルランドとアイルランドの間で厳しい国境管理をしない ための対応策を話し合っていますが、打開策は見えていません。

 ジョンソン政権内では離脱延期法を無視して、強行離脱する案も浮上してお り、先行きは極めて不透明です。以前も解説したように、もしEUと英国との間 で合意がないまま離脱すれば、いきなり関税が発生するなどさまざまな弊害が あります。英国のロンドン市場は国際金融の中心地であるため、世界的な影響 を懸念する声もあります。また英国を欧州市場開拓の拠点としてきた日本企業 は、戦略の見直しを迫られます。影響力の大きい話題であるだけに、今後の報 道にぜひ注目してください。(waka)