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10月17日

ノーベル化学賞 吉野彰氏 リチウムイオン電池開発、米大2教授と スマホやEV普及 (10月10日付朝刊 1面、3P総合2面、13P企業2面ほか)

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 スウェーデン王立科学アカデミーは10月9日、2019年のノーベル化学賞を、 旭化成の吉野彰名誉フェロー、米テキサス大学のジョン・グッドイナフ教授、 米ニューヨーク州立大学のマイケル・スタンリー・ウィッティンガム卓越教授 に授与すると発表しました。  授賞理由は「リチウムイオン電池の開発」。吉野氏は旭化成の研究者で、企 業所属の研究者の受賞は02年の田中耕一氏(化学賞受賞、島津製作所)以来で す。

 充電して繰り返し使える電池を蓄電池といいます。リチウムイオン電池は蓄 電池の一種です。従来の蓄電池よりも高出力・大容量なのが特徴で、同じ質量 で比較した場合、ニッケル水素電池の3倍、鉛蓄電池の7倍程度の蓄電能力があ ります。  リチウムイオンを使った蓄電池の基本原理を発見したのがウィッティンガム 氏、電池の正極を開発したのがグッドイナフ教授、これらを踏まえて、電池の 基本構造を確立したのが吉野氏でした。

 高性能な蓄電技術が確立したことは、電子機器の小型化・軽量化に大いに貢 献しました。ノートパソコンや携帯電話、スマートフォンをはじめ、さまざま なモバイル端末が普及し、ビジネススタイルやライフスタイルを大きく変える 原動力になりました。

 また自動車の電動化が進んだのもリチウムイオン電池のおかげです。ガソリ ンエンジンではなく電動モーターでクルマを動かす電気自動車(EV)のアイディ アは以前からありましたが、ガソリン車並みの航続距離を出せる電池技術がな かったため、なかなか実用化しませんでした。リチウムイオン電池の登場によ り、09年にはじめて三菱自動車がEV「i-MiEV(アイ・ミーブ)」の量産化に成 功。その後も国内外のメーカー各社が発売し、エコカーの大きな潮流になって います。

 この日の企業2面でも解説していたように、正極材、負極材、セパレーター などリチウムイオン電池を構成する部材の開発・製造では、日本の素材メーカー が強みを持っています。ただ完成品については、韓国や中国勢が低価格を武器 に相次いで参入しており競争が激化しています。車載向け電池では、これまで 日本のパナソニックが世界シェア首位でしたが、中国・寧徳時代新能源科技 (CATL)がその座を奪いました。  ノーベル賞受賞に至ったこの分野で、日本企業が引き続き技術面・価格面で 競争力を維持できるかは今後の大きな注目点です。(waka)