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10月31日

グーグル、量子コンピューターの「超計算」成功発表 量子計算、世界が競う 性能はスパコンの15億倍(10月24日付朝刊 1面、25日付朝刊 1面ほか)

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 米グーグルは10月23日、「量子コンピューター」を使って複雑な計算問題を 最先端のスーパーコンピューターよりも極めて短い時間で解くことに成功した と発表。日経ではこの話題を24日付朝刊や25日付朝刊の紙面で大変大きく報じ ていました。

 みなさんもご存じのように、コンピューターはあらゆる情報を0と1で表しま す。原理としては、金属など電気を通しやすい物質(導体)とゴムなど電気を 通さない物質(絶縁体)の中間的な性質を持つ「半導体」という物質を使って、 電気信号の流れをオン・オフに切り替えることで0と1を表現して、計算処理し ます。

 量子コンピューターはこれとはまったく異なり、原子や光子、電子など微小 な世界にある量子を研究する「量子力学」の原理を使ったコンピューター技術 です。私たちの常識的な感覚では理解しにくいのですが、これらの量子は「0 でもあり、1でもある」という不思議な振る舞いをします。  これを利用すると、すべてを0・1で表現する方法に比べ、複数の情報を一度 に計算できるので、処理速度が飛躍的に向上すると考えられてきました。実際、 今回のグーグルの発表では、最先端のスパコンでも約1万年かかる「乱数をつ くる問題」が、量子コンピューターでわずか3分20秒で解けたとしています。 これほど圧倒的な性能の向上が期待できる技術なのです。

 原理自体は1980年代に考案されましたが、特殊な物理現象を利用するため素 子の開発などが難しく、「実現するのは100年後」とも言われていました。そ の後、米仏の研究者2名が光子を制御する手法を考案するなど(両氏は2012年 にノーベル物理学賞受賞)、技術革新が進みました。米IBMやグーグル、マイ クロソフトなどの先進的IT企業も積極的に研究開発に取り組んでおり、今回の 成果に至りました。  このニュースは開発を競ってきた他の企業にも刺激を与え、開発が一層加速 していくと期待できます。膨大なデータを扱う素材開発や創薬などの研究も進 むはずです。

 なお記事でも指摘しているように、量子コンピューターがもたらす新たな問 題として、情報セキュリティへの影響があります。現在、ネットの通信や暗号 資産(仮想通貨)の安全性を守るために使われている暗号化技術は、コンピュー ターが苦手とする「素因数分解」を利用しています。桁数が多い素因数分解は、 現在のスーパーコンピューターで何万年もかかるものがありますが、これを量 子コンピューターではわずか数秒でこなせるようになります。各国研究所はこ れに備え、新たな暗号方式の開発にすでに取り組んでいます。日本政府も対策 に本格的に乗り出す見通しです。(waka)