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6月 4日

米、有人宇宙船打ち上げ NASA・スペースX 民間主導へ一歩(6月1日付日経朝刊 1面、4P国際面)

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 米航空宇宙局(NASA)と宇宙ベンチャーのスペースXは5月30日(日本時間31
日)、新型宇宙船「クルードラゴン」を初めて人を乗せて打ち上げ、予定通り
の軌道に投入することに成功しました。米国の有人宇宙飛行は2011年7月にス
ペースシャトルが退役して以来9年ぶり。このニュースを日経では6月1日付朝
刊の1面ほかで大きく報じていました。

 今回の打ち上げ成功が注目されるのは、初めて民間企業が開発を主導した有
人宇宙船によるものだからです。

 冷戦時代に米国と旧ソ連を中心に始まった宇宙開発計画は、いずれも政府が
主導してきました。米国の宇宙船としては「スペースシャトル」が有名ですが、
2度の事故で安全対策のコストが膨らんだことから計画の大幅な見直しに着手。
国家機関であるNASAは火星飛行などの先端分野に注力し、宇宙輸送は民間に移
管することとなりました。
 NASAは引き続き資金と技術を提供していますが、開発の主体はあくまで民間
企業。現状ではスペースXと航空機大手ボーイングの2社がNASAと契約していま
す。NASAとしては両社を競い合わせることでコストの削減を図る狙いで、政府
主導に比べ「200億~300億ドルを節約できた」としています。

 今回の新型宇宙船を開発したスペースXは、電気自動車(EV)の開発ベンチャー
として知られる米テスラの最高経営責任者(CEO)、イーロン・マスク氏が02
年に設立した企業です。1日付の国際面の記事でも解説しているように、スペー
スXは無人宇宙開発で価格破壊を引き起こしてきた実績があります。コストと
安全性を両立させることが必須ですが、順調に正式運用が始まれば、米国の有
人宇宙開発ビジネスが今後活性化していく可能性があります。

 民間企業が保有する宇宙船が本格的に利用されるようになれば、宇宙旅行の
実現や宇宙空間での映画撮影なども夢ではなくなります。地球上では不可能だっ
た技術的な実験を宇宙空間で行うことが可能になり、まったく新しい製品の開
発にもつながるかもしれません。
 もちろん実現はまだ少し先になるでしょうが、コロナウイルス禍の中で世界
経済が停滞を余儀なくされる一方で、こうした未来を見据えた挑戦に民間企業
が意欲的に取り組んでいることをぜひ知っておきたいところです。(waka)