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6月11日

昨年の出生率1.36、4年連続低下 出生数90万人割れ(6月6日付日経朝刊 1面、3P総合2面、4P総合3面)

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 厚生労働省が今月5日発表した2019年の人口動態統計で、合計特殊出生率(1
人の女性が生涯に産む子どもの数の平均数)が1.36と、前年から0.06ポイント
下がったことが明らかになりました。4年連続の低下で、07年以来12年ぶりの
低水準です。
 日本の人口の維持に必要な出生率の水準は2.07と言われます。日本の出生率
は長らくこの水準を下回っており、人口減少の要因となっています。日経では、
この話題を6日付朝刊1面で大きく報じると共に、総合3面では先進各国の出生
率の動向や課題について詳しく解説していました。

 毎年このコラムでも解説しているように、少子化・人口減少は財政や公的年
金をはじめ日本の諸制度に幅広く影響を与えます。また人口が減れば、それだ
け労働力や消費、貯蓄といった基本的な経済活動が縮小するため、中長期的な
経済成長にも影響を与えます。

 将来の収入に対する不安感が強いと、出産を断念する人々が増えやすくなり
ます。その意味で、女性が働きながら安心して出産・育児をできる職場環境を
整えることは少子化対策として重要です。
 日本の女性は出産を契機に離職し、育児が一段落してから復職するケースが
多く見られます。年代別の就業率を折れ線グラフにすると「M」のような形状
を描くため、「M字カーブ現象」と呼ばれます。政府や産業界が保育所の整備、
教育の無償化、育児休業制度の普及促進など少子化対策に取り組んできた結果、
かつてに比べれば仕事と出産・育児の両立はしやすくなっており、M字カーブ現
象は徐々に解消されつつあります。

 しかし今回の結果を見てもわかるように、それでも少子化の流れに歯止めは
かかっていません。さらにもう一段の対策が必要です。

 この日の総合3面の記事で参考例として紹介していたのが、ドイツの施策で
した。特徴は、父親の積極的な育児参加を促していることだと言います。例え
ば、育児休業中の所得を補填する「両親手当」にも一工夫されていて、一方の
親のみだと受給期間は12カ月ですが、両親とも休業すると14カ月になる仕組み
になっています。その効果もあって、ドイツの父親の育休取得率は19年時点で
35.8%となったそうです。同国の18年の出生率は1.57と、前年に比べ0.19ポイ
ント上昇しています。

 日本では、出産と同時に仕事を断念する女性は今も少なくありません。長時
間労働をプラスに評価するような企業風土が残っていると、女性が出産後に復
職するのが難しくなり、男性の育児休業取得も進みません。その意味で職場の
意識改革は重要です。
 また現在、コロナ禍を契機に在宅勤務が急速に普及しています。「アフター
コロナ」の段階になっても引き続き定着させることができれば、子育て中の女
性が仕事を続けやすくなり、復職支援につながるかもしれません。

 長時間労働を是正したり、育児中の女性が働きやすい環境を整えたりするこ
とは、企業にとって生産性向上にもつながる施策です。働き方改革や女性活躍
の機運を滞らせず、引き続き積極的に取り組んでいくことが重要です。
(waka)