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6月25日

国産スパコン世界一奪還 理研・富士通「富岳」8年半ぶり 高速計算、研究・産業に競争力(6月23日付日経朝刊 1面、24日付朝刊 2P社説、13P企業1面ほか)

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 6月22日に発表されたスーパーコンピューター(スパコン)の計算速度を競
う世界ランキングで、日本の理化学研究所と富士通が開発した「富岳(ふがく)」
が米国や中国を抑え、日本のスパコンとして8年半ぶりに世界一の座につきま
した。この話題を日経では翌日の朝刊1面や24日付の社説などで取り上げてい
ました。

 スパコンとは演算速度が超高速の大型コンピューターのこと。気象現象の発
生メカニズムを解明して予測に役立てたり、膨大な種類の化合物のデータの中
から、病気の原因分子と結合する化合物を探し出して創薬につなげたりするな
ど、複雑なシミュレーション(模擬実験)においてスパコンは威力を発揮しま
す。その性能向上は国の技術力や産業競争力に直結することから、各国の企業
や研究機関が開発にしのぎを削っています。

 日本は2011年にスパコン「京(けい)」で世界ランキング首位となりました。
富岳は京の後継機で、14年から開発が始まりました。京が1年かかるほどの実
験を、富岳は数日でこなせるといいます。本格的な運用は21年からですが、今
年4月から新型コロナウイルス感染症対策として、富岳を活用して約2000種の
既存薬から治療薬候補を選ぶ研究が始まっています。

 21年以降には、米国と中国が次世代機を投入する見通しです。富岳は開発が
順調に進んで運用を1年前倒ししたことから、最新の順位で昨年まで1位だった
米国のスパコン「サミット」の性能を上回り、今回の結果に至りました。首位
奪還は快挙ですが、米国と中国のこの分野の技術力は極めて高く、富岳がこの
先も長く首位の座にいられるとは限りません。

 今後重要になるのは、富岳を活用して魅力的な研究成果を生み出していくこ
とです。24日付の企業1面でも解説しているように、京は、CPU(中央演算処理
装置)や基本ソフト(OS)の仕様が使い勝手が悪いと受け取られ、京をベース
にしたスパコンは想定ほど売れませんでした。せっかく世界最高峰の計算速度
が実現できても、産業利用が進まなければ創薬のような具体的な成果にはなか
なか結びつきません。
 今回の富岳は、当初から「使いやすさ」を重視して開発されたといいます。
「富岳」の名も富士山に由来し、性能の高さだけでなく、「利用の裾野の広が
り」を示しています。産官学が協力して、富岳の能力をどれだけ引き出してい
けるか。コロナ対策など、どんな具体的な成果が生まれていくか。今後のスパ
コン関連の報道にぜひ注目しましょう。(waka)