仕事ゴコロ・女ゴコロ
12月

この指止まれ!で仲間が集まる面白いプロジェクトを

UCC上島珈琲【マーケティング本部 グルメコーヒー事業部】

進 裕子(しん ゆうこ)さん

2012年UCC上島珈琲に入社。R&D部門を経て、15年よりマーケティング本部。グルメコーヒー事業部にて「ブルボンポワイントゥ」プロジェクトリーダーを務めるほか、新規事業を手がける。鳥取県生まれ。
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日本のコーヒー文化の草分けUCC上島珈琲で商品企画を担い3年。 社を上げ日仏恊働で「種の再生」に挑んだ稀少なコーヒープロジェクトを受け継ぐ 若きリーダーは研究職出身の30歳。その飛躍のカギ、仕事への情熱に迫る。

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コーヒーメーカーとしてさらなる新規市場の開拓へ

 UCC上島珈琲は昭和8年に神戸で創業した会社です。以来、世界中のおいしいコーヒーを日本に紹介することはもちろん、世界初の缶コーヒーや日本初の真空包装レギュラーコーヒーの開発をはじめ「UCCコーヒー博物館」の設立など、日本のコーヒー文化の裾野を広げてきました。

 近年は街角でコーヒーを手軽に楽しむカフェ文化も定着し、品種や産地、抽出方法などにもこだわって楽しむサードウェーブスタイルも浸透。コーヒーを取り巻く環境はとても豊かになりました。そんな中、UCCはコーヒーメーカーとして、さらなる新規市場の開拓にも取り組んでいます。私は新規開拓プロジェクトのリーダーとして、ふだんコーヒーを飲まない方にもコーヒーを楽しんでいただくにはどうしたらいいかを考えている毎日です。

繊細な豆のダイナミックなプロジェクトを率いる

 新規事業と同時に私がプロジェクトを任されているのが、UCCの中でもひときわ個性的な「ブルボンポワントゥ」というコーヒーです。これは生産が途絶えてしまっていたブルボン種の原種を探し出し「種の再生」に挑んだ、あしかけ18年に及ぶプロジェクトで、原産国である仏国と恊働で進めているもの。日本に紹介されて今年で11年目を迎えました。

 コーヒーは農作物ですので、同じ品種でも年によっても場所によっても差が生じます。「ブルボンポワントゥ」は1年に1度だけしか輸入されないため、毎年、最高の収穫のタイミングを見計らい、現地での品質チェックで合格した豆を厳選し、焙煎士とともにその年の豆の特長を活かした味づくりを熟慮して発売に臨みます。

 豆としてもともと収穫量も少なくとてもデリケートで、細かな神経を配る必要がある一方、プロジェクトとしては社をあげて取り組んでいるためダイナミックな動きも必要。一筋縄ではいかない仕事です。担当して3年になりますが、初年度は本当にてんてこまいでした(笑)。責任は大きいですが、社内外の多くの人の夢やロマンがつまった特別なコーヒーのプロジェクトを受け継ぎ任されていることに、とてもやりがいを感じます。

研究業務をしながら、ひとり、商品開発に挑戦!

 私は入社して3年間はR&Dセンター(当時)と呼ばれる神戸にある研究部門に所属し、業務用コーヒーなどの味覚設計を担当していました。何タイプもの配合ちがい、焙煎ちがいの豆を作っては、飲み比べたり、成分を分析したりする仕事です。その頃は白衣を着て働いていました。

 そこで通常業務と並行して、個人的な興味から進めていたのが「レギュラーコーヒーを使って簡単においしいカフェオレができるパックを作れないかな?」という研究発想の商品開発でした。「ものとして成立したとしても市場性はあるのだろうか?」「使い勝手としてこれでいいのだろうか?」と次々出てくる課題をクリアしようと、社内調査をしたり、東京のマーケティング本部にも足を運んだり、いろいろな部署に協力してもらっていました。結局、そのカフェオレパックは実現できなかったのですが、そんな活動が目に止まったのでしょうか、マーケティング部門へ異動することになり、今に至ります。

研究部門とマーケティング部門との架け橋に

 新しいことにチャレンジできる環境は嬉しかったものの、神戸から東京へ生活の場が変わることも個人的には大きな変化でしたし、正直不安が大きかったです。でも、私がマーケティング部門へ行くことで「研究と商品開発の架け橋になりたい」と思いました。それまでの仕事の中で、部門間の隔たりや物理的な距離のためにコミュニケーション不足を感じたことがあったからです。

 分析や検証という手法、香りや味わいをデータから見る視点など、それまで研究部門で培った知見や経験をマーケティングに活かしたいという思いは、今も変わりません。今年の「ブルボンポワントゥ」では豆の特性である繊細な香りを最大限に活かすために、例年以上に焙煎に科学的分析を持ち込み、その香りを余すことなく届けられる機能的なパッケージを開発し採用することができました。新しいアプローチができたのではないかと思っています。

のっぺらぼうな商品は作りたくない

 マーケティングや商品開発は、自分ひとりでは進めていけない仕事です。たくさんの人を巻き込んでいかなければいけません。チームで進める仕事は難しさもありますが、プロジェクトマネジメントの醍醐味も感じています。
 
 私はのっぺらぼうな商品は作りたくないです。協力を仰いでやってもらう前に、まずはそもそも魅力的なプロジェクトにしたい。「こんな面白いことを始めようと思っています。一緒にやりたい人、この指止~まれ!」と声を上げて仲間を広げていけたら最高だと思っています。そうして集まった人達の力が結集してカタチになり、多くの人に「これ、自分たちがやったんだ」と誇らしげに言ってもらえたら素敵です。そのためにも、魅力的な企画の種をまずは自分が率先して考えていかなければいけないと思っています。

目指すべき人たちが近くにいる環境に感謝

 私はまだ30代になったばかりです。若いうちからチャレンジする場をもらえたことにも、周囲に「こうなりたい」と思える目指すべき人たちがいる環境にも感謝しています。一人で仕事を抱え込みがちだった私が、上司たちのおかげで、この数年でずいぶん変わりました。相談しやすい空気があることがありがたいです。

 自分自身が面白いと感じることの大切さ、一緒に仕事をする人達をよく見てそれぞれの得意技を見抜くことなどは、今の上司から学んだことです。年齢や立場などに関係なく時には自分が馬鹿になってでも周囲に教えを請う上司の姿を見た時には、ハッとしました。私にはなかった姿勢だったので衝撃を受けました。人を巻き込んでプロジェクトを進めていくとはどういうことなのか考えさせられます。

 また、社内には子育てしながら活躍している女性の先輩たちがたくさんいます。私も会社員として仕事をしながら、いずれは母親という仕事もしたいと思っています。どちらも諦めたくないです。

知れば知るほど面白いからこそ、多くの人に伝えたい

 今は企画を考えることが楽しくて、休みの日でもつい仕事のヒントを探して町を歩いてしまいます。インテリアショップなどにもよく足を運びます。先日は個人的に「ジャパン ハンドドリップ チャンピオンシップ(JHDC)」というコーヒーの抽出競技大会にも出かけてきました。お店の方やコーヒー好きの方たちがどうやって抽出しているのか、そして、一杯のコーヒーにどれほどの情熱を込めているのかを知ることができ、とても刺激になりました。

 つくづくコーヒーとは面白い飲み物だと思います。何の変哲もない黒い液体なのに、選ぶ楽しみ、いれる楽しみ、一緒に飲む相手、食べものとの組み合わせによって変わる楽しみなど、たくさんの側面があります。しかもそれが全世界共通で、人と人とをつなげてくれる存在だというのが大きな魅力です。携わるほどに面白みを感じるコーヒーの魅力を、これからさらに多くの人に広げていきたいと思っています。

取材後記

UCC東京本部に併設されたショールームで行われた今回の取材。進さんがいれてくれた「ブルボンポワントゥ」のいい香りに包まれたインタビューとなりました。コーヒーアドバイザーや管理栄養士の資格も持っているそうで「探究好きです」という言葉にも納得。最近のお気に入りのコーヒーは「ケニアのコーヒー」とのこと。「明るい酸味が好きで、柑橘系のフルーツに合わせると味わいが変化しておいしいんです」とにっこり。ゆっくり言葉を選びながら質問に答える姿が印象的でした。

奥深く幅広いコーヒーの世界への入口がたくさんあるUCCのホームページはこちら。 http://www.ucc.co.jp