仕事ゴコロ・女ゴコロ
1月

柔軟に対応できるバランス感覚と交渉力が大切

日本電波塔[観光本部 マーケティング課 広報・ライセンス管理]

清水 綾子(しみず あやこ)さん

2008年、米国の大学を卒業後、米国企業に就職。09年帰国し日本電波塔株式会社へ入社。以来、広報・ライセンス管理業務に従事。開業60周年プロジェクトのチームリーダーを兼務。東京都生まれ。
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今年開業60周年を迎える『東京タワー』のライセンス管理を一手に担い9年。 前任者のない仕事で結果を重ね、周年プロジェクトのリーダーにも抜擢された35歳。 米国での勤務経験から得たよりよく“働き続けるため”の働き方とは?

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唯一無二の存在『東京タワー』の価値を守る仕事

東京タワーは今年12月に開業60周年を迎えます。3月3日(土)には高さ250mの特別展望台が『トップデッキ』と名称を変え、新アトラクション『トップデッキツアー』がスタートするなど、様々な周年プロジェクトが進行中です。日本電波塔株式会社は民間企業でありながら、日本や東京のシンボルとして多くの方に愛される「東京タワー」という唯一無二の建造物を管理・運営しています。自社でありながら私たちも、東京タワーは富士山と同じく"国民みんなのもの"という意識を持って仕事にあたっています。

そんな東京タワーのブランドイメージを守り、魅力を発信するのが広報・ライセンス管理担当という私の仕事です。中途採用で入社して以来9年間、ロイヤリティ、ライセンス、プロパティ(知的財産)に関する業務を担っています。

10年前は無断撮影・無断使用が当たり前...

私が入社したのは東京タワーが50周年を迎えた頃で、「今後100周年、そしてその先を見据えてブランド管理を一元化していこう」と舵を切ったタイミングでした。当時は、国が2002年に掲げた『知的財産国家戦略』が徐々に浸透してきていたものの、まだまだプロパティ使用への意識が低く、いつの間にか広告やCMに東京タワーが大きく出ていたり、私たちの知らないところで東京タワーをモチーフにした商品が出回っていたりすることも日常茶飯事でした。

そんな中でまずは、無断での商業使用を禁止していることの周知から始まり、クレジット(著作権)表記のルール作り、ホームページを利用した許可申請のシステム構築など、法律の専門家と共に手探りで一つずつ進めていきました。おかげで今では許可申請が必要なことも浸透し、使用の際にはご一報いただけるようになりました。

正しい法的知識、バランス感覚、交渉力!

根本的な思いとして、東京タワーを背景に撮影をしていただいたり、商品にしていただけたりすることは大変嬉しく、ありがたいと思っています。ただ、この数年でSNSでのコミュニケーションが広がり、営利目的使用の線引きや判断が難しいこともありますし、時にはプロパティ使用許諾料やロイヤリティが発生することをお伝えすると、難色を示される方もいらっしゃいます。それでも粘り強く交渉していかなければいけません。

やはり東京タワーはシンボル的な存在であり、老若男女多くの方のたくさんの思い出と繋がっている場所でもあります。皆さんの大切な思いを壊すようなことがあってはいけません。そのためにも、正しい法的知識を持ち合わせ、ケースバイケースで柔軟に対応していけるバランス感覚と交渉力がこの仕事には欠かせないと思っています。それは対外的な話だけではなく、対社内にも同様だと思っています。

N.Y.で就職。仕事漬けの毎日に疑問を感じた20代半ば  

私は日本の大学を卒業した後、渡米して米国の大学を卒業。そのままN.Y.の企業に就職しました。日本メーカーの米国進出をサポートする会社で、やりがいのある仕事でしたが、深夜3時過ぎまで働いたり、土日もイベントのために出社しなければいけなかったり。生活の全てが仕事で埋め尽くされる日々でした。「この働き方は長くは続けられない...」と感じ転職を考えました。25歳の頃です。

ずっと米国で働きたい気持ちはありましたが、ちょうど法律が変わり就労ビザが抽選制になったのです。3〜5年でビザの更新が必要で、なおかつ抽選となると、土台があまりにも不安定で仕事にも集中できません。実際、プロジェクトの途中で帰国を余儀なくされた知人もいました。

そこで私は帰国を選択。「いずれ米国に戻って日本企業を相手に仕事をする際にも、日本の会社に勤めておくことはいい経験になる」と考えました。そして帰国して間もない頃、転職情報を見ていたらたまたま日本電波塔の求人に出会い、転職。あっという間に9年が過ぎました。今はオンオフのバランスもよく充実した毎日を送っています。

プロジェクトリーダーとして中間管理職を初体験中

昨年からは周年プロジェクトのチームリーダーを任されています。8つあるプロジェクトチームのうち、管理職ではないリーダーは私を含む2人だけ。リーダーに指名された時は突然のことで驚きました。認めてもらえたことも嬉しかったですし、自己流で手探りしながら積み上げてきたライセンス管理という仕事が間違っていなかったのだと感じて、ほっとしました。

プロジェクトメンバーは部署の異なる20代の若手社員7名。全員が熱い思いを持っているいいチームです。「次の会議でアイデアを必ず1個以上は持ち寄ろう」と言えば、皆20個くらい持ってきます。自分の仕事ではない分野に対しても普段からこんなにアイデアを持っているんだ!と、その情熱には正直驚きました。

私自身はというと、初めて中間管理職のような立場を味わっています(笑)。普段はマーケティング課内で仕事をすることがほとんどなので、思いも寄らない意見や考え方に触れながらのチーム仕事は新鮮です。

反論することが苦手なメンバーの意見もゼロにしないために匿名投票をしてみたり、議論が煮詰まった時は時間を無駄にしないために一度私が持ち帰ってみたり、プロジェクトチームで検討したアイデアをどのように社内プレゼンするかを考えたり、あの手この手でプロジェクトを進めています。できるだけ多くのアイデアを形にしていきたいです。

余力を持った85%の頑張りで95点を続ける

私の仕事ぶりは周囲から「サバサバしている」と言われます(笑)。定時になればサッと帰ることも理由のひとつかもしれません。その根底には、N.Y.での激務を経てワークライフバランスを重視するようになった経験があります。

仕事への頑張りという意味では、N.Y.時代は限界値を超える120%だったと思います。それに比べると今は、余力を残した85%くらいかもしれません。私は"頑張り"というものは自己満足な感情を含むものだと思っています。頑張りが必ずしも成果物や評価に結び付くとは限りません。それであれば、効率やシステム化を重視し余力を持った85%で、理想とする100点満点もしくはそれを超える結果を出す方が合理的です。

自分の持ち時間、スキル、体力などを認識し最大限活用した85~90%の頑張りで、平均点95点を長期間続けられる。私はそういう働き方を選びたいです。余力を残している分、突発的な仕事や作業にも柔軟に対応できますし、なにより精神衛生上、気持ちが安定します。

自分のペースで働ける環境を確保する

今は将来について明確なプランは持ち合わせていませんが、仕事はずっと続けていきたいです。プライベートを含む人生のネクストステージへ備える意味でも、いいパフォーマンスを続ける意味でも、自分のペースで働ける環境を確保することがとても大切だと感じています。そういう意味では、現在会社から与えられている環境にも感謝しています。

自分の裁量を確保するためには、「この人に任せておけば大丈夫」「何かあったらあの人に頼ればなんとかなる」と思われるよう信頼を積み重ねること、そして、自分にしかできない専門性を持ち組織内でポジションを確立することが大事だと思っています。

東京のシンボルとして、おもてなしのけん引役に

私は、パリの『エッフェル塔』を始め、世界中のタワー建築の事業者が加盟する『世界タワー連盟』の国際会議に出席することがあるのですが、東京タワーが世界の人々からもとても好印象を持っていただいていることを感じます。勝手に日本を代表する大使のような気持ちにもなり、東京タワーを管理していることに責任を感じます。

現在、来塔者の約3割が海外からのお客様で、2年後には東京オリンピック・パラリンピックも控えています。東京タワーは街のシンボルだからこそ、おもてなしのけん引役でもありたいと思っています。現場での接客対応はもちろん、現在は5言語対応の館内パンフレットや公式HPも、3月にグランドオープンする『トップデッキツアー』で導入する13言語対応の音声ガイドを皮切りに、多言語対応を強化していく予定です。これからも変わらず東京タワーのブランドをしっかり守りながら、魅力をさらに国内外へ広げていきたいと思っています。

取材後記

「スマートフォンの絵文字に東京タワーがあることが嬉しい」という言葉に、思わず「当たり前ですよ」と言いそうになりました。それほど私たちにとっては一企業の建物ではなくシンボルである、東京タワー。清水さんは休日になると関東近郊の温泉でリフレッシュするそうですが「東京にいながら元気になりたい時、自分を見つめ直したい時には、夜、東京タワーの足元から塔を見上げてみてください。鉄骨の力強さと光量にパワーをもらえます!」とのこと。パワーをチャージしに行ってみたいと思いました。一人で訪れる人も案外多いそうです。

今日のライトアップや展望台の待ち時間なども紹介されているホームページはこちら。 https://www.tokyotower.co.jp