仕事ゴコロ・女ゴコロ
11月

現場を見ずには始まらない。バッグづくりは、手を抜かず楽しく!

エース MD本部 デザインセンター マネージャー

金子朗子(かねこ あきこ)さん

服飾系専門学校を卒業後、帽子デザイナー勤務を経て、1999年、エースに入社。2007年、事業戦略本部 商品企画部チーフ、11年、サブマネージャー、18年より現職。レディーストラベルバッグやライセンスブランドの企画を手がけるほか、「ソエルテ」をはじめ自社ブランドの立ち上げに関わる。埼玉県生まれ。
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2017年の訪日外国人旅行者および出国日本人の総数は4658万人に上り、街でスーツケースを見ることも増えた。50年以上前からスーツケースの国内生産を続けるエース(東京・渋谷)は、数多くのブランドを扱う国内有数のバッグメーカー。そのデザイン部門を率いる金子さんに、現場主義を貫くものづくりを聞いた。

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自社ブランドを中心にトラベルバッグなどを展開

 エースは1940年創業のバッグメーカーです。スーツケースやトラベルバッグから、ビジネスバッグ、日常使いのおしゃれバッグまで、多数のブランドを扱っています。北海道に自社工場を構え国産のスーツケースづくりにこだわる一方、イタリア、香港、シンガポールなどに拠点を持ち、グローバルに事業を展開。ゼロハリバートンなどのインターナショナルブランド、アディダスなどのライセンスブランドも手がけています。

 近年は、女性社員チームが開発した女性のためのスーツケース「ハント」や、50代以上の女性の日々の外出を支えるトロリーバッグ「ソエルテ」など、日本の市場に合わせてターゲットを絞った自社ブランドも商品化しました。

シーズンごとにカラーリングやデザインの指標を定める

 現在デザインセンターには約20名のデザイナーが在籍し、エースの全ブランドの商品デザインを行っています。ファッション業界と同じくバッグ業界も春夏/秋冬という2つのシーズンがあり、年に2回の展示会に合わせて新商品を企画開発します。現在は2019年の秋冬シーズンの商品が進行中です。

 私はデザイナーの1人として商品づくりを担当するとともに、エース全体のシーズン毎の色使いの指標も定めています。世界にはその年の流行色を決めたり発表したりする情報機関が複数あります。それらの情報をもとに時代の流れやトレンドを押さえ、バッグの世界に落としこんだ時にどのような色使いや世界感が最適かを社内で共有するためです。各ブランドによりアウトプットは異なりますが、この指標があることでシーズンのデザイントーンが整います。年に2回行う大切な業務のひとつです。

現場のリサーチなしに商品づくりは始まらない

 デザイナーにはMD(マーチャンダイザー)の視点も重要で、リサーチやターゲティングの業務も欠かせません。ユーザーのリアルな姿を観察するためにはさまざまな場所へ足を運びます。特に私は現場を知ってからでないと商品づくりを始められないタイプです。トラベルバッグを企画する場合は空港やターミナル駅などでリサーチをします。

 今秋発売した大人の女性向けブランド「ソエルテ」では、デパ地下や歌舞伎座、バスツアーの発着所へ出かけるなど、いつもとは異なる場所でもリサーチを重ねました。50代以上向けとして開発したものの、現場を見ると実際には70〜80代のユーザーに使ってもらうことも想定できたため、より安定性を重視して転倒しにくい重心設計にし、安全性にも配慮しました。キャスターを大きくしたり、ハンドル部分に車のヘッドライトなどの光を反射するシールをつけたりと細部を改良。また、トロリーバッグの持ち手部分に紙袋やビニール袋をかけて使う人が多く、袋がずり落ちている姿を何度も見かけたので、ハンドル部分に袋を引っ掛けられる大きめのフックをつけました。

胸を張ってプレゼンを! 失敗したら次につなげる!

 営業部門やマーケティング部門からあがってくる市場動向と合わせ、自分の目で見て考えて練りあげるプロセスを大切にしています。納得して作り上げた内容で自信を持ってプレゼンしたいですし、社内に納得してもらうためにも、関係各所の協力を得るにも説得力が違ってくると思うからです。現場での徹底したリサーチをもとに胸を張って語れる状況を整えることが、プロジェクトの成功を左右するといっても過言ではありません。

 時にはターゲットを読み違ってしまうこともありますし、良かれと思ってやったことが裏目にでることもあります。そんな時はやり直せばいいし次につなげればいいのです。「失敗したら反省し、必ず次回につなげる」これが私のモットーです。

20代後半、帽子づくりからバッグづくりへ

 私はエースが2社目です。以前はメーカーで帽子のデザインをしていました。5年ほど働いた後、趣味でつくっていたバッグに携わりたいと思い転職しました。20代後半のことです。

 プロダクトが帽子からバッグへかわっただけでなく、組織の規模が大きくなったことで仕事のプロセスも変わりました。それまで答えがあるようでない感覚的なものづくりをしていた私には新鮮でした。誰にどこで使ってもらうためにつくるのかを明確にし、最善の答えを探しながら進めることがとても楽しかったです。今でもリサーチやターゲティングを含めたものづくりが好きです。

海外との仕事を経験して気がついた大切なこと

 入社10年目を迎えた頃にまかされた中国との仕事は、その後の糧になりました。日本のオフィスを離れ現地に足を運ぶ機会が多く、外から自分たちの仕事を俯瞰して見ることができました。デザインの現場も製造の現場もそれぞれに苦労があり、立場が変われば主張が異なって当然であることを、身をもって感じました。

 また、製造の現場を知り、直接話すことで、これまでにない製造方法やより良い依頼の仕方が見つかることもありました。やはり現場は大事です。相手の立場で物事を考えること、柔軟な発想や姿勢をもつことの大切さを学んだ良い経験でした。

幼い子供が教えてくれる人へのやさしさ

 プライベートでは6歳の子供を持つ母親です。育児と仕事の両立を始めた頃はリズムがつかめず苦労もありました。うまく切り替えができず、子供がなかなか寝てくれず時間を上手に使えないことにイライラしていました。四六時中続いていた仕事モードをオフにできるようになってからは、楽になりました。今はざっくりのびのびと子育てをしています。

 子供ができて初めて知る世界もたくさんあり、仕事のヒントや刺激ももらっています。先日は保育園の母親たちのコミュニティを利用して、働くママのバッグ事情をヒアリングさせてもらいました。また、お年寄りや障害のある人などに、とても自然にやさしく朗らかに接する子供たちの姿を見て、世の中に色々な人がいることに改めて気づかされました。これからはもっと幅広い人たちに目を向けていきたいです。人にも環境にもやさしいバッグづくりを探っていきたいと思っています。

取材後記

東京・神宮前にあるオフィスでの取材。ショールームフロアにはスーツケースやバッグがたくさん並び、一角では次の展示会の資料づくりの商品撮影が行われていました。多数のブランドをもち、年に2回のシーズンに合わせて新商品を発表していくことは並大抵のパワーとスピードではないと感じました。ずらりと並ぶ商品を前に「どの仕事もいちいち楽しい!」と独特の表現をして笑う金子さん。社内でもその「楽しみ力」はお墨付きだとか。仕事も子育ても楽しんだもの勝ちなのかもしれません。

エースのホームページはこちら https://www.ace.jp