仕事ゴコロ・女ゴコロ
2月

数字で経営にコミットする「財務」の醍醐味

日立ビルシステム 財務本部 水戸財務部 部長代理

吉成 玲子(よしなりれいこ)さん

2000年、日立製作所に入社。昇降機製造事業の拠点である水戸事業所や、東京本社で財務業務に従事。シンガポール勤務を経て、09年より水戸事業所の財務部主任。14年、国内昇降機事業が日立ビルシステムに移管されたことに伴い、日立ビルシステム所属となる。育児休暇を経て、18年より現職。東京都生まれ。
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日々の暮らしの中で何気なく利用しているエレベーターやエスカレーター。今では都市生活に欠かせない社会インフラのひとつとなっている。昇降機を戦前から手がける日立は、ものづくりの企業であり財務が強いことでも知られる。工場の財務部で手腕を振るう吉成さんに、財務のプロとしての心得、育児をしながらチームを率いる術を聞いた。

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昇降機の新設需要はアジアが中心

 日立が第1号機エレベーターを納入したのは1932年。日本初の超高層ビルと言われる霞が関ビルディングや、大阪万博の会場に設置した260人乗り巨大円形エレベーターをはじめ、近年では東京都庁、六本木ヒルズ、東京スカイツリーなど、約90年にわたり数多くの公共施設や商業ビルに昇降機を納めてきました。

 昇降機業界は今、国内での新設の伸びしろは少なく、アジアの需要が活況です。日立の新設事業は中国市場が半数以上を占めています。2017年に世界最速の分速1260m(時速75.6km)を計測した、中国・広州市の「広州周大福金融中心」のエレベーターなど、アジア事業への注力は今後も続きそうです。

生活インフラとして社会に役立つ喜び

 日立ビルシステムは、昇降機の設計、製造、設置はもちろんのこと、メンテナンスまでをトータルで手がけています。エレベーターで「BUILCARE(ビルケア)」という文字を見たことがある方もいると思います。納入後の保守管理は私たちの大切な仕事です。また、新設から20年を過ぎたエレベーターは、リニューアル工事も必要です。

 私の仕事は財務ですが、会社の事業が社会インフラとして広く世の中に貢献できていることは、働き続ける大きなモチベーションになっています。町を歩いていても、テレビドラマを見ていても、自社のエレベーターやエスカレーターはすぐにわかります。当たり前に利用されていることが誇らしく、嬉しくなります。

経営戦略と数値を結びつけて意見できるのは財務だけ

 新卒で日立に入社して以来19年、ずっと財務畑で働いてきました。日立は財務が強いことでも知られています。入社当時に言われた財務の心得に「常にひとつ上の職位の人と対等であるべし」という教えがあります。新人なら他部門の主任クラス、主任なら部長代理クラス、部長代理なら部門長や工場長たちと対等に渡り合って仕事をすべし、ということです。その教えの通り、部長代理である私は今、部門長や工場長、経営陣と同じテーブルを囲み仕事にあたっています。

 私が勤務する水戸事業所は、グローバルのマザー工場で、この工場の数字がどう動くか、どう動かすかは会社にとって重要です。経営戦略と数値を結びつけて意見できるのは財務だけ。会社の状況、市場の動き、世界経済なども考慮し、現実を見据えた数字を提示しながら経営をサポートしています。財務の仕事は地味なようでいて、とてもダイナミックです。

女性でも第一線で働き続けたいから財務のプロに!

 学生時代から、女性である自分が結婚や出産を経ながら第一線で働き続けていくためには専門性が必要だと感じていました。私は数学と英語が好きで、とくに数字には自信がありました。世界中の人と一緒に仕事をしてみたい思いもあり、世界共通言語である数字の仕事はうってつけ。就職活動の時点から財務に絞りこの道に入りました。

 19年が経った今、その読みは正しかったと思います。海外勤務も経験できました。育児休暇から復帰すると同時に昇格し、年齢や国籍の異なる個性豊かなチームメンバー8人の長として、責任ある立場で仕事を続けています。

全体最適とチーム力向上を支えるのはコミュニケーション

 今は工場という大きなひとつのチームの「全体最適」を追い求める立場にあります。旗振り役として時に嫌われ者になりながら、数字を掲げて各部門のお尻を叩かなければいけません。厳しい言葉もきちんと相手に届けるためには信頼関係が大切です。そこで、まずは日頃のコミュニケーションを密にしようと、週に一度、各部門との定例会議を設けました。

 差し迫った課題がなくても毎週開催される会議への参加に、はじめは皆しぶしぶ、でした。製造現場にとって時間の損失は生産力低下につながりかねませんから、気持ちはわかります。それでも顔を合わせて直接話す場を持ち続けることで、徐々に各部門からも課題が上がるようになり、気づいたことや困ったことがあったら「次の定例で話そう」と思ってもらえるようになりました。お互いに課題を持ち寄り、会社の向いている方向を理解しながらともに解決の糸口を探す。これが結果的に全体最適を探ることになり、チーム力向上にも役立ちました。

悩んだ末にフルタイムで職場復帰

 育児休暇から復帰したのは2018年の春です。初めての子育てだったので時短勤務で様子をみるかどうか悩みましたが、思い切ってはじめからフルタイム勤務にしました。

 時短勤務を選ぶとどうしても不在になる時間が増えます。私はみんなを鼓舞する立場として、部下や他の部門の方が相談したい時に対応できるようにしたいと考えました。自分の失敗や人望のなさが理由ならば力不足を反省し努力するまでですが、勤務時間が足を引っ張るとしたらやりきれない。そう思いフルタイムを選びました。

 フルタイム勤務と子育ての両立は家族との連携がカギです。夫と夫の親の理解、協力なしには不可能です。預かり時間の延長など融通を利かせてくれる保育園にも大いに助けられています。わが家はお迎えも家事もできるほうがやるスタイル。料理も夫婦で協力します。週末のキッチンはつくりおき料理工房と化し、見事な連携プレーで次々とおかずを作り冷凍庫へ。その様子はまるで料理番組のようです。

 こうしたつくりおき体制や家事の分担も、急にできるものではありません。育児休暇中から復帰を見据えて徐々にやっていたおかげで、スムーズな仕事復帰と家庭の両立が実現できたと思います。

感謝を忘れず、人としての基本を大切に

 仕事一辺倒だった私も子育てをするようになり、公私のバランスがよくなりました。仕事以外のコミュニティーができ、いろいろな人の考えや生活を知ることができたことは、仕事にも人生にも生きます。

 これからは、仕事を自分でやり過ぎず人にまかせていくことが大きな課題です。マネージャーとして人を育てることにも力を入れていきたいと思っています。人材育成や他部署との潤滑な連携、いずれも相手の心に思いが届かなければうまくいきません。それにはまず自分が感謝や愛情の気持ちを大切にすること。人の話をよく聞き、相手の気持ちに共感すること。そうした人としての基本をもう一度見直していきたいと思っています。

取材後記

茨城県ひたちなか市にある水戸事業所で行われた今回の取材。敷地内には、日本一の高さを誇る213mのエレベーター研究塔や、機械技術に関わる歴史的遺産である「機械遺産」に認定されている純国産第1号の電気機関車などが点在していました。取材中ひときわ吉成さんの表情がほころんだのがシンガポール勤務の話。「とっても楽しくて帰国したくなかったです」と笑いますが、なんと結婚して間もない出来事だったとのこと。「結婚してから単身で行ったのが良かったです。待っていてくれる人がいるという安心感と適度な縛りがあったからこそ、毎日が充実しました。同じ立場の女性を探して『逆単身赴任妻の会』をつくり、社外の人たちと交流できたことも刺激的でした」。イレギュラーな状況を楽しめるのは能力のひとつですね。

「日立ビルシステム」のホームページはこちら http://www.hbs.co.jp