仕事ゴコロ・女ゴコロ
8月

QRコードを軸に柔軟な発想で世の中の課題を解決する

デンソーウェーブ 社会ソリューション営業部マーケティング室 課長

谷藤 由利(たにふじゆり)さん

食品メーカーを経て、2001年デンソーウェーブ入社。営業企画室にて広告宣伝でチームリーダーを務めた後、10年よりQRコードを活用した新しいビジネスの企画立ち上げと拡大に従事。最前線の営業部を経て19年より現職。三重県出身。
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メールアドレスの交換、飛行機の搭乗手続き、ショッピング時の決済など、様々なシーンで利用されるQRコード。現在世界中に普及しているこの技術は、1994年にデンソー(現デンソーウェーブ)が開発した。当初からオープンライセンスに踏み切ったビジネスの舞台裏、誕生から四半世紀を経たQRコードの最新形など、QRコードに携わって17年の谷藤さんに話を聞いた。

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誰でも作成・読み取り可能なQRコード

 QRコードは、文字や画像などの大容量情報を小さな正方形のマトリックス模様に暗号化できる、2次元コードです。QRとはクイックレスポンスに由来し、その名の通り、数字にして約7000文字もの大容量データを高速で読み取れることが最大の特長です。

 QRコードはデンソーウェーブの登録商標ですが、私たちはQRコードの情報処理技術をオープンにしています。現在、アプリなどを使って誰でも情報をQRコード化できますし、読み取る側も専用端末は不要で、携帯電話のカメラとアプリがあれば手軽に読み取れます。

カメラ付き携帯電話の登場で普及が加速

 技術をオープンにした当初、じつはコードの普及によって自社の専用読み取り装置を広く販売するというビジネスプランがありました。そんななか2002年にJ-PHONE(現ソフトバンクモバイル)から、カメラ付き携帯電話が登場したのです。

 携帯電話でQRコードが読めるようになってしまい複雑な気持ちでしたが、それから17年を経た今は、情報社会のインフラとしてグローバルにQRコードが役立っていることを大変誇らしく思っています。

 今年で誕生から25年を迎えたQRコード。この間、より小さなスペースに印字できる「マイクロQRコード」や、情報の一部を非公開にできるセキュリティ機能を搭載した「SQRC」、コードの中央部分に字や画像を入れられる「フレームQR」など、付加価値をもったQRコードを次々に開発してきました。2000年にはISO規格の「ISO/IEC18004」に制定され、世界中へと普及。様々なシーンで幅広く活用されているのは嬉しい限りです。

地下鉄のホームドアの開閉をスムーズに

 私は現在、新しいソリューションを作り出す新規市場の開拓営業をしています。QRコードを軸に、ハードに依存しない自由な発想で、様々な業界・お客様が抱える課題や困りごとを解決していく仕事です。

 例えば今年の秋からは、都営地下鉄のホームドアの開閉システムにQRコードが利用されます。多くの電鉄会社の車両が相互に乗り入れる都内では、同じ駅に車両数や1両あたりのドア数が異なる車両が行き交います。そうした違いを瞬時に判断して、ホームドアを開閉することが求められていました。

 そこで、車両側に「この電車は10両編成の6ドア車です」という情報のQRコードを貼り付けておき、駅に入ってきた電車のQRコードをホームに設置した読み取り端末がキャッチして、ホームドアを適切に開閉するシステムを開発しました。秒単位で計画されている都内の緻密な交通網のスムーズな運行に、QRコードが一役買うことになります。

 また、公開部・非公開部に情報を分けて格納できる「SQRC」の最新形として、個人の顔の情報をQRコード化して銀行の窓口やATMで本人確認に使えるシステムも開発。すでに実用化されています。安全な本人認証が実現しATMでできる銀行業務が増えることで、人材不足を解決する一助となっています。

これまでにないことをやるのが好きなんです

 デンソーウェーブは、私にとって2社目。前職は食品メーカーで営業に従事していました。夫の転勤に伴い退社し、2001年に転職。約10年間、デンソーウェーブの広告宣伝や企画の仕事をしていました。

 その後、営業部へ異動。広告宣伝の仕事で培った他社との人脈や企画力をいかして新しい価値・ソリューションの営業を始めました。もともとデンソーウェーブは端末機器の会社。ハードウェアの販売が基本でハードに依存しないソリューション営業は少なく、しかも女性の営業は当時私1人だけでした。いろんな意味で異質な存在だったと思います。

 新しいことや人と違うこと、これまでにないものを生み出していくことが好きな私には、開拓営業の仕事はうってつけでした。ただし、私が手がける新規開拓プロジェクトは結実までに時間がかかるものが多く、前述の「顔認証SQRC」も、実用にこぎつけるまで約5年かかりました。

中長期のプロジェクトを実らせるには熱意と周囲の協力が不可欠

 今日明日の売り上げにはならない新しいプロジェクトを立ち上げ、推進していくには、なんといっても発案者の熱意と周りの協力が不可欠。周囲を巻き込んでいく力が必要です。

 私の場合、例えば日々の生活の中の不便や不満が原動力になることがあります。「これって不便だな」と思った体験が、新事業への熱意に変わることもあります。そんな私の周りには幸いなことに、面白いことを一緒にやっていこう、という仲間たちがいます。普段からコミュニケーションも密です。いわゆる「ワイガヤ(立場や年齢の違う人たちが対話する場)」からたくさんのアイデアが生まれています。一緒に進んでいける人がいれば、困難なプロジェクトもやりきれます。 

子育ても既成概念にとらわれません

 既成概念にとらわれず、人と違うことをいとわない性格は、私生活でも同じ。子育ても我が家流です。中学2年の息子がいますが、例えば「塾に行かせた方が良い」という話が親の間で話題にあがっても、本当にそれが必要かどうかは本人が決めればいいと思っています。

 いわゆる母親としての完璧も追い求めません。夫がとてもおおらかで育児や家事に協力的なおかげでもありますが、会社のおつきあいを優先することもよくあります。息子は、小学生の頃には家に居てくれるお友達のお母さんを羨ましく思っていたこともあるようでしたが、今では「僕はこういう環境に生まれたからね」と言ってくれます。

課題は現地にある。世界各地発の新しいQRコードをみんなで!

 今後は、もっと世界中でQRコードを軸に新しいことを生み出していきたいです。今のチームメンバーは、私以外は20〜30代と若いです。ひとりひとりが、新しいことを生み出せるようになり、世界を舞台にそれぞれの現地が抱える課題や困りごとをどんどん解決していってほしい。日本発だけでなく、世界各地発の新しいことが生まれていってほしいと思っています。

 そのためにまずはメンバーに、私が感じているような、新しいことが生まれるワクワク感や醍醐味をたくさん味わってもらいたいです。生活の中で不便に思ったり、改善したいと感じたりしたら、それが新しいことを生むきっかけになります。難しいことではありません。

 QRコードはあくまでもデータの入れ物です。文字、数字、たくさんの情報を入れられます。地下鉄のホームドアのように機械と機械をつなげることはもちろん、企業と企業をつなげることも、人と人をつなげることもできます。あらゆるものをつなぐことができるとても便利なQRコードという媒介を利用して、これからも新しい可能性を探りながら、まだ誰も見たことのない使い方や価値を生み出していきたいと思います。

取材後記

その語りぶりや物腰からも、柔軟な発想力と実現力を感じさせる谷藤さん。「とにかく楽観的なんです」と笑います。好奇心旺盛ゆえに趣味もどんどん広がるそうで、フルマラソンなどで体を動かすかたわら、今ハマっているのは「ナンタケットバスケット」作りとのこと。米東海岸の島発祥の伝統的なかごで、海外セレブに愛好者が多く「籐かご界のエルメス」とも言われるもの。「近所の友人が持っていた手作りのナンタケットバスケットが素敵で、私も習い始めました」。すぐに手足を動かす実行力はさすが。取材中も「実際にやってみましょう」と、顔を撮影してその場でQRコード化してくれました。このQRコード=私の顔のデータ、と思うとなんとも不思議な気持ちになりました。

「デンソーウェーブ」のホームページはこちら https://www.denso-wave.com/ja/