仕事ゴコロ・女ゴコロ
10月

「食」のビジュアルプロ集団。強みはコーディネート力

株式会社ヒュー フードコンシェルジュ・プロデューサー

森河奈美江(もりかわなみえ)さん

店舗内装業を経て、20代半ばで空間デザイナーとして個人事務所を設立。2005年、株式会社アマナ入社。07年、食に特化したグループ会社の株式会社ヒューへ転籍。15年より現職。埼玉県出身。
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クオリティーの高いビジュアルは、今や情報発信に欠かせない。広告、宣伝はもちろん、プレゼンや社内コミュニケーションに至るまで、画像がもたらす力は大きい。フイルム写真が主流だった時代から、ストックフォト事業を中心にビジュアルの専門家集団として多くのコミュニケーションを支えてきたアマナ。その中から「食」に特化して独立したユニットがヒュー(hue)。立ち上げ当初から12年、ヒューを支え続ける森河さんに話を聞いた。

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アマナから「食」に特化して生まれたヒュー

 アマナは今年で創業40年を迎えるビジュアルコミュニケーションを手がける会社です。「レンポジ(レンタルポジフィルム)」と呼ばれていた時代から、企業やメディアなどに画像を提供するストックフォト事業、広告やブランディングなどに関わるビジュアルコンテンツの企画制作事業をはじめ、マーケティング領域における多彩なニーズに応え様々なビジネスを展開しています。

 現在は自動車、科学・医療、美容・化粧品といった産業分野別に、特色あるクリエイター集団による取り組みを組織化。「食」に特化したヒューもそのひとつとして2005年に独立しました。

 ヒューは現在15人のカメラマンを中心にCGクリエイターや営業など計40人が在籍し、年間約3000案件を手がけています。そのすべてが「食」に関わるプロジェクトです。内容はスチール・動画の撮影だけでなく、商品パッケージ、レシピ、WEBサイト、イベントの企画制作など多岐にわたり、クライアントも幅広く食品メーカーや飲食店などに限りません。

 例えば、化粧品メーカーとのプロジェクトでは、ボタニカル系コスメの発売イベントで原材料にまつわる食材を使ったケータリング料理を提案しました。業種・業態を問わず「食」で何かをしたい時のパートナーとして、あらゆることをビジュアル化・具現化していきます。

20代で建築デザイン事務所を設立してわかったこと

 私はアマナに入社して14年。異業種からの転職で、前職は空間デザイナーでした。建築家になることを夢見て、学生時代は建築工学を学び、卒業後は店舗内装を手がける会社に就職しました。その後、いくつかの会社やアトリエ系と呼ばれる建築家の個人事務所を経て、20代半ばに空間デザイナーとして独立しました。

 しかし、ビジネスの難しさや自分の得手不得手を思い知りました。図面を書く仕事に集中してばかりいると営業に手が回らず、収入はすぐ不安定になります。取引相手にうまく丸め込まれて制作費を踏み倒されるといった苦い経験もしました。

 その一方でよくわかったのは、0から1を生み出すデザイン力に長けた天才肌のクリエイターがたくさんいて、自分はその1を広げる方が得意であるということです。デザイン図面に1人で向き合っている時間よりも、施工スタッフらをアサインして現場監督として人と人の間で立ち回ることの方が楽しかったです。

業種や肩書きは違っても、やっていることが似ていた

 踏ん張りながら数年を過ごし、数多くの店舗デザインを請け負っているうちに「写真も撮ってほしい」「ロゴも作ってもらえたら」「WEBサイトもお願いできないか」と、クライアントから様々な相談を受けるようになっていきました。そのつど適したクリエイターや知人の会社などを紹介していて、アマナもそのひとつでした。

 そんなアマナから、新しい組織編成でビジネスを広げたいと声をかけてもらったことで新たな道が開きました。再び会社員になろうとは考えていませんでしたし、業界も違います。でも、自分が好きな現場監督の仕事はプロデューサー業に近いうえ、クライアントからの多彩な相談ごとに直接自分で応えられるのは魅力でした。収入が安定することにもメリットを感じ、就職を決めたのです。

働き続けるために、環境も仕事も自分で作り出す

 入社2年目には立ち上がったばかりのヒューへ転籍。アマナに数ある特化ユニットはそれまでカメラマンのみで構成されていたのですが、初めてプロデューサーとして参加することになりました。カメラマン4人、レタッチャー(画像の補正・修正専門スタッフ)、私の6人が初期メンバー。その後クリエイターは増えていったものの、プロデューサーはずっと私1人だけで、怒涛の8年が過ぎていきました。

 キャリアに小休止が訪れたきっかけは出産でした。1年半の育児休暇を経て再びプロデューサーとして現場に復帰しました。でも、以前のように深夜までスタジオで撮影するような仕事は現実的に無理です。そこで自分が働きやすい環境を確保しようと新ビジネスを考えました。

 アマナという会社は組織でありながら個々の力の集団で、ここで生き抜いていくには、常に自ら考えて行動しなければいけません。人事ひとつとっても辞令や出向はなく、働きたい部署やユニットがあれば直属の上司や会社を通さずにその部の上司に直談判ができます。プレゼンし、受け入れてもらえれば異動できます。もし断られたら何事もなかったように今の仕事を続け次のチャンスを狙えばいい、といった具合です。誰もが自分の企画をボードメンバー(経営陣)にプレゼンできる場もあります。そんな会社だからこそ、私も新ビジネスを提案できました。

私の8割は人脈でできているからこそ!

 常々「私の8割は人脈でできています」と豪語しています。長年培ってきた人とのつながりを最大限に生かし、約3000人の食に関わる専門クリエイターをコーディネートするキャスティングビジネス「ヒューアンド(hue and)」を企画し、昨年始めました。単に専門クリエイターを紹介するだけでなく、私たちがフードコンシェルジュとなりクライアントの要望を聞き、より魅力的な人や場など「食」を通じたコミュニケーションを提案していくというものです。

 この新規プロジェクトを軸に、子育てするビジネスパーソンの悶々とした気持ちも払拭していきたいと思っています。私自身、以前は数多くのレセプションやパーティーに顔を出せましたが、それらはほとんど夜に開催されるため今は出られません。それならば、昼の時間帯に有意義なクリエイターズミーティングなどをもっと開いていこうと考えています。ないものは作ればいいし、自分で会社を動かせばいいのです。

 キャリア志向の女性たちがママになっても楽しく充実した仕事を続けられるよう、まずはこのプロジェクトを成功させるのが目下の目標です。ゆくゆくは出社せずに遠隔でプロデューサーの仕事ができるように、環境を整えていきたいです。じつは今年の夏から、自宅とは別に週末に家族で過ごせる拠点を持ちました。いずれはそこにいながらにしてこの仕事をしたいですね。

取材後記

天王洲アイルに立ち並ぶ洒落た倉庫街の一角にあるアマナのオフィスで行われた取材。エントランスには、現在開催中という「浅間国際フォトフェスティバル 2019」の過去出品作品が並び、ギャラリーのようでした。「ヒューアンドでは専門クリエイターを募集しています。最近はニッチな専門性でアピールするクリエイターが増えているんですよ」と森河さん。ビール泡師、惣菜管理士、氷師、お家居酒屋プランナーなど個性あふれる顔ぶれに驚きます。スペシャリストたちにも細分化と多様性の流れを感じました。

「ヒューアンド」のホームページはこちら https://hue-hue.com/and/