Nikkey’s ~ここだけのハナシ~
2月

“駐在妻”が地方で再就職するのって大変!

臨床心理士。40歳

原田 舞香さん

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駐在妻としての海外赴任&臨床心理士の経験を活かして

 二児の子育てをしながら臨床心理士の仕事をしています。臨床心理士として非常勤で働く傍らで、半年ほど前にWEBサイト『駐在妻ライフキャリア研究所』を立ち上げ、オンラインを利用した相談業務を始めたところです。

 "駐在妻"とは夫の転勤に帯同して海外で生活する奥さんたちのことで、私も駐在妻でした。約5年間、中国北京で暮らし2015年に帰国。現在は夫の職場の都合により滋賀県で暮らしています。

 『駐在妻ライフキャリア研究所』は、臨床心理士としての経験と駐在妻の経験、地方(首都圏以外)に暮らしているという現状を活かして、海外駐在で自身のキャリアが一度途切れてしまった女性たちのサポートをしたいと思って立ち上げたものです。

「ブランクあり、子育てあり、首都圏外」での再就職の難しさ

 駐在妻にも、働きたいと思っている人と思っていない人がいます。ひと世代上の駐在妻というと旦那さまが大企業にお勤めという専業主婦の方が多かったですが、近年はベンチャー企業や中小企業でも海外拠点を持つことが多く、様々なライフスタイルを持った家族が海外へ赴任しています。終身雇用が当たり前ではなくなり共働きがスタンダードになったことなどから、帰国後も働きたいと考える駐在妻が増えています。

 帰国後の住まいが東京などの大都市であれば仕事は見つかりやすいですが、首都圏以外ではかなり厳しいです。私は東京出身なのですが、初めて大都市を離れて生活しその厳しさを痛感しています。ブランクあり、子育てあり、首都圏外という環境で希望に近い再就職を叶えるのは難しいのが現実です。

甘く見ていた東京との違い...

 正直、地方で働くことや子育てすることを甘く見ていました。働きたくてもそもそも求人が少なく、通勤時間を1時間と見積もっても電車やバスの本数が少なく、乗り継ぎの都合で実際はもっと時間がかかります。

 また、私たち家族にとって今の町はまったくの新天地。まわりに子育てをサポートしてくれる親類縁者がいない中、自分たちだけで"ワンオペ育児"をしようとしても立ち行きません。地方では車を運転できないと応募できる求人も、通園可能な保育園も限られてしまいますし、子どもが体調不良にでもなったら、もう大変。数少ない病児保育は時間が短く、仕事は遅刻や早退をしなければなりません。あちらにもこちらにも謝り続けるのは辛いものです。

 ワーキングマザーのこなすべきタスクは、仕事だけしていればよかった頃に比べて、私には3〜5倍はあるように感じました。朝5時起きしても夜眠るまで分刻みでやることが山積みで、自分の健康管理などはもちろん後回し。私も一時期は完全にオーバーフローになりました。今は、仕事の量をセーブして在宅時間を増やし、仕事と子育てとのバランスを取っています。在宅時間が増えたことで『駐在妻ライフキャリア研究所』の活動も始めることができました。

20代に出会った2つの大きな転機

 私は大学で心理学を学んだ後、一般企業に就職しました。当時はセクハラやパワハラめいたことも当たり前、メンタルヘルスという言葉は耳にするけれど、社内の張り紙に相談窓口の電話番号が書いてあるだけ、という状況でした。時代的にどの会社も似たり寄ったりだっただろうと思います。

 そんな中、ひとりの先輩女性が体調を崩してしまいました。今思えば"うつ"だったのだと思います。でも上司は彼女を怠け者扱いして叱責していました。私を含め、周囲は誰も彼女を助けてあげられませんでした。最終的に彼女は会社を辞めてしまいました。

 その出来事がきっかけで、「やはり働く人の心の健康をサポートする仕事をしたい」と思い、会社を辞めて人材派遣会社で働きながら勉強を始めました。20代後半でした。

 また、ちょうどその頃、私は疾患のために左眼の視力を失ってしまいました。「この後どれくらい自分の健康が保たれるかわからない。人生を後悔したくない」と思い、迷っていた臨床心理士の道に進むことを決意。仕事を続けて学費を稼ぎながら指定大学院で修士号を取り、臨床心理士になりました。人生で最も勉強した時期でした。

子どものためにキャリアを一時停止し海外へ

 資格が取れた頃に結婚。夫の職場のある関西に引っ越しするとともに、臨床心理士としてのキャリアを大阪でスタートしました。ほどなくして夫の海外赴任が決まったのですが、私も新しい仕事が始まったばかり。夫には単身赴任してもらい、約2年離ればなれの生活が続きました。

 夫に帯同して海外へ行こうと決めた理由は、子どもでした。私も30代になりライフプランを考えていく中で「子どもを産めるのであれば産みたい」と思うようになったのです。自分のキャリアは一旦ストップすることになりましたが、良い選択だったと思います。

 子育てをする駐在妻のコミュニティの中で、子ども、夫、美味しいものの話に花を咲かせて過ごしつつも、私は帰国後に臨床心理士として働くことを考えていました。駐在先のマンションで日経を読んでいたことも、社会とのつながりを保ち続けるために大切にしていたことのひとつです。

 帰国後、思いがけぬ地方の厳しさとワーキングママの大変さに苦戦しましたが、いつかやりたいと思っていた『駐在妻ライフキャリア研究所』も立ち上げることができ、毎日充実しています。

地方が元気になるように町を応援していきたい

 実は今、キャリアを含めた働く人の心の健康サポートを専門とする心理職に向けて、研鑽のために大学院卒後教育プログラムにも通っています。いずれは"駐在妻"だけでなく、"転妻"と言われる転勤族の奥さんたちの支援もしていきたいと思っています。

 私の町は市長さんが女性で、女性の活躍支援も手厚く新しいことにチャレンジしやすい環境もあります。東京の一極集中はなかなか変わりませんが、地方が沈みこまないよう、よそ者ながら私もこの町を応援していきたいです。

 使い尽くされた言葉ではありますが「置かれた場所で咲く」という言葉が大好きです。境遇を嘆いていても何も始まりません。今できることを精一杯やって、後悔しないように過ごしていきたいと思います。

ニッキィズ一問一答

Q.

今までに買った一番高価なものは何?

A.

「40歳になった時に買った腕時計か、今通っている大学プログラムの授業料」

Q.

近頃、衝動買いしてしまったものって何?

A.

「春物のブラウスを迷いに迷って2枚とも買ってしまいました(笑)」

Q.

健康や美容のために心がけていることは?

A.

「40代になり急に太りやすくなった気がして(苦笑)、夜間の間食を控えるなど体重コントロールに気をつけています。あとは腰痛持ちなので、起きてすぐに骨盤体操をしています。体操は1年ぐらい続けていますが、ずいぶん楽になった気がします」

Q.

お金にかえられない元気の源は?

A.

「家族が笑顔でいてくれることです」

Q.

みんなに教えたいおすすめの本を一冊!

A.

「『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット。人生100年時代、これからの生き方や働き方、ライフキャリアについて語られている目からウロコの一冊です」

取材後記

国や地域にもよりますが、ビザの都合から駐在妻が現地で働くこと(お金を稼ぐこと)は禁止されているケースがほとんどで、原田さんが駐在していた北京は特に厳しかったそう。「それならば…とボランティアでいろいろ活動していました。働きたくても働けなかった時期があったおかげで、逆に今、自由にできるのだから目いっぱいやろう!と頑張れます」とのこと。今年も春がやってきますね。それぞれ置かれた場所で目いっぱい咲きましょう!