Nikkey’s ~ここだけのハナシ~
4月

突然“ハラスメント”担当に任命されました!

石油開発・人事。32歳

松尾 明香さん  

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いくら「もったいない」と言われても、とても働き続けられない

 石油を扱う会社の人事部署で働いています。海外に駐在する社員のサポート、新卒採用、社内のハラスメント対策という3つの仕事を担当しています。ちょうど今は来年度の新卒採用の仕事が山場を迎えつつあり忙しい毎日です。

 4年ほど前までは大手総合電気メーカーの本社人事部で働いていました。前職では会社から期待をかけてもらっていたと思うのですが、求められる仕事がヘビーなうえ、何といっても労働時間が長すぎました...。長い目で見た時に自分の暮らしと仕事との両立の見通しが立てられないと感じて転職を決意。周囲からは「もったいない!」とも言われましたが、当時私は28歳。「今ならまだ転職先の選択肢は多い」と思い、動くことにしたのです。

転職先で思いがけず出合ったハラスメント分野

 石油業界についてはまったく知らなかったのですが、募集ポストが"海外人事"だったことがきっかけで今の会社へ。前職でも駐在員のサポートや外国人採用時の労働条件の調整などの経験があったので、そのキャリアを活かし、さらに深めていきたいと思い決めました。

 そしてこの転職先で今まで関わったことのなかった新しい分野の仕事に出合い、今とてもやりがいを感じて取り組んでいます。それが"ハラスメント"の分野です。

突然の任命。セミナー講師を務めることに

 現在の会社は業界的にも男性が多く、特に現場では体育会系の雰囲気が色濃かったのですが、2年ほど前に全社的にハラスメントへの対策を本格化することに。そして、私が突然その担当に任命されました。人事という立場上、パワハラ、セクハラなどの言葉はよく耳にし、関心はあったものの、業務としては未経験の分野でした。

 企業がハラスメント対策を新たに始めようとすると、外部から講師を呼んで社内セミナーなどを行うことが多いのですが、「全て内製化するように」と言われ、なんと私がセミナー講師を務めることになったのです。人事という分野でキャリアアップしていく中で、いずれは研修講師やプレゼンの経験を積んでいきたいという気持ちはありましたが、突然、こうした機会に出合うとは思ってもいませんでした。

タイムリミットは約9カ月!?

 6月に任命されて年度内には成果を出さねばならない事態の中、まずは実態調査のために社内アンケートを実施して、現状の課題を分析。それを踏まえて、自主的にハラスメントや研修講師に関する社外セミナーに参加し、さらには図書館に通い詰めて猛勉強。大学時代のゼミの勉強を思い出しました。ハラスメントという言葉を聞いたら即座に反応するくらい、毎日ハラスメント研修のことばかり考えていました。

 そして、なんとか11月には初セミナーを開講。その後全国にある7つの拠点を巡回して、管理職からパート職員まで、のべ1000人以上を相手に講演をして回りました。

セミナーで大事にしたのは一貫性とメッセージ性

 セミナープログラムを考える際には、自身が受講生として参加した数々のセミナーも参考にしました。一方的に聞くだけでは気づきをもたらすことができないと考え、なるべく意見交換の場を設けたり、実際の場面をイメージしやすいように映像を交えたり、自分たちの業界にありそうな具体的な事例を盛り込んだり。2時間という制限の中、伝えたいことはたくさんありましたが、一貫性とメッセージ性を大事に練り上げました。

 本番を迎えるまでは「この内容で耐えうるか」と不安になることもありましたが、いざ本番になると、「早くこれを披露したい」というわくわくした気持ちの方が強くなりました。そして、回を重ねるごとにアドリブやアレンジもできるようになり、自分でも意外な一面を発見しました。

 例えば、本題に入る前のちょっとした話の中に、その地域と自分との関連エピソードを盛り込んだり、ハラスメントに関連する旬のニュースを解説したりすることで、会の雰囲気や参加者の関心度が変わることも感じました。それまで以上に新聞やテレビで情報収集するようにもなりました。

周囲の想像を超えた出来栄え!

 そんなセミナー活動の他に、相談窓口の運用やメルマガ配信なども同時進行。社員アンケートを再度行い、研修の前と後での意識の変化を調査するなどして、なんとか年度内に一定の成果を報告することができました。

 結果論ではありますが、社内の人間である私が話して回ったことで会社の本気度も伝わり、社内に専門的知識を持つ人がいることへの安心感も広がったようです。また「内製でこれだけできるのがすごい」という声も多く聞こえてきました。上司を含め周囲もここまでやるとは思っていなかったようです(笑)。

 2年目の今年は新たに役員・管理職向けのセミナーを開催。引き続き相談窓口として信頼される対応を重ねていきたいですし、定期的なメルマガ配信で社内の啓蒙を続けていきたいと思っています。

人工知能(AI)時代にも求め続けられるスキルを磨く

 実は転職直後、前職以上に英語が堪能な社員が多い状況を目の当たりにして"海外人事"というこれまで自身が思っていた強みを見失いかけ、「私の存在意義ってなんだろう...」と悩んだ時期もありました。今は「ハラスメント対策への熱意と知識では社内の誰にも負けない」という自信もあり、精神的にもとても良い状態です。

 これからは人間に代わってAIが担う仕事が増えていくと言われています。総合電機メーカーで働いている時にもその流れはひしひしと感じていました。そんな時代でも求められるのは"対人援助職"と呼ばれる仕事。だからこそ私も、ハラスメント分野を通じてカウンセラーとしてのスキルを高めていきたいと考えています。国家資格であるキャリアコンサルタントは取得できたので、次は2級キャリアコンサルティング技能士を目指したいと思い、勉強中です。

 新しい分野に出合えたことが転機になり、数年前には想像もしていなかったキャリアと人生を今、見渡しています。"計画された偶発性"という言葉がありますが、偶然ふってきた仕事でもまず一生懸命やってみることが大事です。気乗りしなかったり、壁にぶつかったりすることもありますが、皆さんも頑張ってください。大切な財産になることもありますから!

ニッキィズ一問一答

Q.

今までに買った一番高価なものは何?

A.

「資格の勉強代と大学時代の旅行。フィンランドへの教育現場視察、香港の大学生との共同研究など、自身の将来の糧になると思った旅行代は惜しまなかったです」

Q.

近頃、衝動買いしてしまったものって何?

A.

「平昌オリンピックに感動して、日本代表選手と同じデザインの、サンライズレッドカラーのアウターを買ってしまいました(笑)」

Q.

健康や美容のために心がけていることは?

A.

「野菜スープを毎日飲むようにしています。もともと母が毎日作ってくれていてもう10年くらい続けています。飲んだ日と飲まない日では体調が違う気がします」

Q.

お金にかえられない元気の源は?

A.

「KinKi Kidsの堂本光一さんの舞台『Endless SHOCK』。初演時から毎年恒例の楽しみであり励みになっています。エンターテインメントとして素晴らしいのはもちろんですが、仕事人として彼の姿勢やメンタリティ、トラブルへの対処法などもとても勉強になり、いろいろな意味でモチベーションになっています」

Q.

みんなに教えたいおすすめの本を一冊!

A.

「『エンタテイナーの条件』堂本光一。日経BP社から出ている本で、 光一さん=アイドルと思って、侮っているすべての方に読んでいただきたいです。プロとしての覚悟やリーダーシップを学ぶうえでもとても勉強になる本なので、ビジネス書としてもおすすめです」


 

取材後記

ハラスメント対策のプロジェクトを1人で着々と進めていった松尾さん。その計画性と実行力はお見事です。「さすがに緊張した」という役員向けセミナーでも、「その夜、他部署で飲み会があったそうで『セクハラの基準って知ってる?』と役員の方がさっそく語っていたことを友人から聞きました」と後日談にニッコリ。しかし、いくらセミナーでハラスメントとはこういうものだと解説しても、ハラスメントリスクが高いと言われている人ほどピンと来ていないようでなかなか響かない現実もあるとか。意識改革は難しい問題です。