Nikkey’s ~ここだけのハナシ~
4月

皆さんは自宅で最期を迎えたいですか?

ケアマネジャー。47歳

小川めいこさん

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在宅介護のケアマネジャーです

 医療機関でケアマネジャー(介護支援専門員)をしています。ケアマネジャーとは、要介護認定を受けた方が、それぞれどんな介護サービスやサポート制度を利用するのが最適かを考えていく仕事です。サービスを利用する本人や家族と相談しながらプランを練り、手続きなどを進めます。

 私は在宅介護が専門です。現在担当している利用者は40代から90代まで幅広く、難病を抱えている方や高齢で寝たきりになってしまった方などがいます。少なくても月に1回は各家庭を訪問します。長い方は10年以上のお付き合いにもなり、まるで家族や親戚のよう。実の両親や祖父母より会う頻度も多く会話している時間も長いです。

その人が望む「普段の生活」を続けるために

 じつは昨年、担当していた高齢の利用者を10人以上見送りました。この仕事は人生の最晩年をともに過ごします。ケアマネジャーによってその人の最後の日々は変わります。人生が変わるといっても過言ではないかもしれません。

 以前、週に3回、入浴介護サービスを受けている方がいました。その方はお風呂が大好きで本当は毎日入りたかったそうです。でもケアマネジャーから週に3回までと入浴を制限され「制度的に3回以上は難しいのだろう」と諦めていたというのです。ケアマネジャーが「2日に1回お風呂に入れれば十分だろう」という思い込みでプランを立ててしまったために、その方らしい暮らしから遠ざかっていました。

 もちろんすべての希望を叶えることはできませんが、私はできるだけその方が望む「普段の生活」を続けさせてあげたいです。暮らしの中で何を大切にしたいか、リスクを覚悟してでも優先したい時間は何かなどをきちんと聞き取り、その実現方法を探っていけるケアマネジャーでありたいと思っています。

家で最期を迎えることは簡単ではありません

 近年は多くの方が「住み慣れた我が家で最期を迎えたい」とおっしゃいます。皆さんはどう思いますか? 

 これも叶えてあげたいのですが簡単なことではありません。病院の主治医の意見、自宅で介護を続ける家族の状況、夜間でも対応できる在宅医が地域にいるか否かなど、いくつものハードルがあります。

 なかでも24時間365日対応の在宅医の存在は不可欠で、在宅医と家族がどれくらいコミュニケーションを取り合えるかが鍵になります。苦痛や病状の急変、あと数日で命が尽きるであろうことなど、本人や家族にとって受け止め難い状況を伝えなければならない局面がいくつもあります。その際、在宅療養上の不安を、医療職としての視点からではなく利用者や家族の身になって受け止める姿勢を忘れてはなりません。そうしたシビアな内容を上手に伝えるコミュニケーションスキルを持つ在宅医がまだ少ないように感じます。

 介護の現場では相性や連携が重要です。相性の合うケアマネジャーや在宅医、ケアスタッフに出会い、連携やコミュニケーションをうまくとることで、本人の望みをより多く叶えられると思います。

地方の公立病院と都内の民間企業のギャップは大きかった

 この業界で働いて25年目になります。10代の頃は地元の熊本を早く出たくて、大学は仙台、就職先は福岡を選びました。福祉系の大学に進んだものの専攻していたのは心理学。卒業後は調理の仕事に就きました。

 その後、調理の仕事を辞め地元に戻り家事手伝いをしていたところ、公立リハビリ病院でソーシャルワーカーの募集があり就職しました。そこは1965年に開設された自治体が運営する全国初のリハビリ専門病院で、歴史も伝統もあり、今では当たり前となっているチーム医療がいち早く機能していました。

 公務員としてそのリハビリ病院で約8年働いた後、再び地元を出たい気持ちが高まり、新天地を求めて単身上京。民間の小さな事業所に就職しケアマネジャーの仕事を始めました。

 地方の公立病院から東京の民間企業への転職はカルチャーショックだらけでした。介護サービスの向上を求めながら、経営的な数字も追わねばならず、忙しさの種類が違い、1年で燃え尽きてしまいました。「これ以上は無理・・・・・・」と退職を考えていたところ、偶然にもその事業所が閉鎖されることになりました。

 担当していた利用者さんたちを別の事業所へ引き継ぐ手続きを進める中で、「うちに来ませんか」と声をかけていただいたご縁で、今働いている医療機関へ転職。はや15年が過ぎました。

働きながら国家資格を取得。スキルアップをこれからも!

 15年の間に組織は大きくなり、2人だったケアマネジャーも8人に増えました。現在私は主任ケアマネジャーとして後進の指導にあたったり、地域との連携を模索したり。必要に応じて新しい制度をつくるなど、広い視野でこの街に暮らす人たちの介護サービスを考える立場になりました。

 10年ほど前には、働きながら夜間の専門学校に通い、社会福祉士と精神保健福祉士という国家資格を取得。月曜から金曜まで仕事後に通学するのは楽ではありませんでしたが、勉強してよかったです。自信につながりました。今は社会保険労務士の国家試験に向けて勉強中です。

 ケアマネジャーとして一人ひとりに最善のケアプランを提案するためには、最新の制度やサービスの知識、実際にケアにあたる専門家やスタッフたちとの連携が欠かせません。常に新しい情報をインプットしながら、これからもスキルを磨き続けたいと思います。

ニッキィズ一問一答

Q.

今までに買った一番高価なものは何?

A.

「サウジアラビアへの旅行。70万円以上しました」

Q.

近頃、衝動買いしてしまったものって何?

A.

「衝動買いはあまりしません」

Q.

健康や美容のために心がけていることは?

A.

「仕事中の移動はすべて自転車を使うようにしています。電動自転車もありますが普通の自転車を自力でこいで街を走っています」

Q.

お金にかえられない元気の源は?

A.

「友人や家族です」

Q.

みんなに教えたいおすすめの本を一冊!

A.

「『悪童日記』アゴタ・クリストフ。戦時下のヨーロッパを舞台にした双子の少年の話です。残酷なことも含め淡々と描写する書き方が忘れられません。ちょっと異色な本や刺激的な本を読みたい人におすすめします」

取材後記

「いつか私がケアを受ける側になったら、きっと細かいことを言ううるさい利用者になってしまうだろうな」と笑う小川さん。自分が要介護になった時、体の動きや時間に限りができた時、何を優先して暮らしていきたいのか。今からじっくり考えておきたい問題です。家族の介護に直面しているニッキィさんも少なくないと思います。介護する側、される側、遅かれ早かれどちらにもなることを忘れず、毎日を大切にしていきたいですね。ちなみに、小川さんの趣味は約30年続けているというパン作り。「食べるパンはほぼ自分で焼く」とのこと。小川さんの暮らしにとって美味しいパンの優先順位は高そうです。